俺のスキンステッチ(仮称)!!
革靴のスキンステッチとは?
スキンステッチとは……!!
とひとことに言っても何種類かあるのですが、基本的には
革の表面に縫い糸を出さない(=革の断面を縫う)技法
です。
その結果、革断面に通った糸の部分が盛り上がり、こんな感じのモコモコになります。
もともとは縫い目を表に出さないことで藪やら何やらに糸を引っ掛けて切れるのを防ぐためのカントリーな意匠です。
フランスでは狩猟用の靴として。イギリスではカントリーシューズとして、それぞれ親しまれてきたUチップに搭載されるのが基本でした。
スキンステッチは難しい?
スキンステッチと言えば紳士靴界隈では諸説囁かれています。
雑誌やブランドの広告文には「超絶技巧!!」と喧伝される一方、チマタでは「靴学校に通えば2週間でできるようになる」なんてことも言われています。
とはいえ、結局本人がそこに価値を感じるかが全てです。
ただの縫い目ですよこんなん、と言ってしまえば全てが終わります。笑
というわけで、以下個人的な所感です。
もでぃふぁいど はスキンステッチはやっぱり超絶技巧だと思います。
たしかに、靴学校で2週間根詰めれば技術の習得自体はできるかもしれません。が、靴工場では制約がつきます。
具体的には、商売を成り立たせるために日々の生産数や歩留りなど、もろもろのプレッシャーが付き纏うはず。
職人さんたちはそういう諸々の何やらを背負った上でひたすらスキンステッチしてるわけです。
紳士靴に使われるような上質な仔牛の革(カーフ)は薄いので、これの断面を縫うなんてことになると大変な集中力が求められます。また、スキンステッチができるミシンは存在しないため、人間が手で縫うしかありません。
このように誤魔化しが効かないうえ万が一、革表面が破れてしまったら即B品です。厳しい……。
毎日毎日、針に糸を通すような正確さを求められる作業をプレッシャーの中で何時間も続ける……
世界はそれを超絶技巧と呼ぶんだぜ!
超絶技巧というか、職人さんはすごい。
全てのスキンステッチに敬意を込めて!!
(スキンステッチ以外の工程も多かれ少なかれ集中を求められる職人技の数々で成り立っていることもお忘れなく!!日々是靴感謝。)
俺のスキンステッチ!!
というわけで靴好きをこじらせると足元は気づけばスキンステッチの靴だらけ、みたいなところありません?靴好きの憧れですよね。絶対そう。しかもなかまを呼んじゃう系のやつ。
俺の、とは言っても、もでぃふぁいど が施したわけでもなんでもないわけですが、以前書いたブローグマニアと同じく今回は各社のスキンステッチを見ていきます!!
EDWARD GREEN!!
スキンステッチの王様といえばこの靴、EDWARD GREEN(エドワードグリーン)のDOVER(ドーバー)!!!
いつかはドーバー。
そんな夢を胸に抱く紳士も多いはず。今や定価で20万円を超えるその靴はみんなの憧れ……。
が、ところがどっこい、意外とセールにかかってたり、お買い得な未使用品に巡り合ってしまったりと、ウッカリ足元に来ちゃいがちな1足でもあります。人気ゆえ中古市場でも球数多いですし。
そんなドーバーのスキンステッチは2種類。
ライトアングルステッチ!!
1つ目はライトアングルステッチ。ドーバーのエプロン部分、U字型に施されたスキンステッチです。
スキンステッチは革表面を貫通しないと言いましたが、実はコレは貫通してます。
断面はこんな感じ。(違ったらご指摘ください!)
縫い合わせる片方は普通に貫通してますね。ぶっちゃけ耐久性があっていいと思います。スキンステッチって破れそうで怖いんだよなぁ。(あんまり聞きませんが)
このウネウネ具合は個体や使われる革によっても結構差があります。
インスタで見る他人のドーバーはウネウネ(≒隣の芝生は青い)
……はドーバー所持者あるあるだと思います。帰ってしげしげ自分のドーバーを眺める。
(ガチンコ)スキンステッチ!!
これぞスキンステッチ!!!ドーバーのトゥ部分ですね。
完全に縫い目が見えません。でも縫い合わせてある。
そして縫い目の上に現れる凹凸とハリ。ワックス乗せると映えるんですよね、また。
茶靴系の〇〇アンティークと呼ばれる革はこのあたりグラデーションがついててたまりません。最高です。
英国靴は紳士靴発祥の地。その誇りが感じ取れる見事なスキンステッチは一見……いや所有の価値ありやっぱりいつかはドーバー!!
Alden!!
スキンステッチといえば、オールデン。そんな向きもあるかと思います。
コードバンは一般的に牛革と繊維構造が違うためにスキンステッチができない、しづらいと言われています。コードバンは縦に繊維が並んでいるので革を薄く漉くのも大変なんて言われますね。
でもオールデンの職人はなんのその。コードバンでも構わずスキンステッチをやっちまいます。
オールデンではHand Sewn(ハンドソーン)と呼ばれます。(対義語はmachine stitch/マシンステッチです。)
Uチップやローファーのモカ部分、NSTなどが代表的な搭載モデルです。
オールデンのスキンステッチも革断面に糸を通してモコモコさせるのは普通のスキンステッチと同様です。
でもよーく見るとこれはスキンステッチとは言わないかもしれません。
だってこれ、縫い合わせてない!!!
要はこんな感じ。
オールデンでは1枚のコードバンにスキンステッチを施し、モカシンやNSTのスプリットを表現しています。
でも革が1枚だろうが2枚だろうが関係ねえ。このモコモコこそが正義なのです。アメリカですからね。
モコモコ!Yeah!!コードバン!!Hoooooooo!!
みたいな。
スキンステッチはアメリカンドリーム!!!
J.M.WESTON!!
J.M.WESTONはあまりスキンステッチのイメージがない……というかある1足に集約されちゃうのですが、実はアレの他、173タッセルローファーにも採用されてます。
驚愕のはき心地にフランスらしいエレガントさ、そしてスキンステッチ……最高なんですよね、ここのタッセル……。欲しいっす。カジュアルにも履けるし。
より一般的なイメージとしてはここんちのフラッグシップであるハントダービーに施されたスキンステッチが有名です。
印象としては、フランスらしい少し控えめでおしとやかな感じがありつつ、でもエスプリが効いていて主張しすぎないけれど存在感はしっかりある。これがフランスの靴なのよ!!と言う感じのスキンステッチですね!!!!わかって!!!!
ダブルライトアングルステッチ?
と呼ぶのかどうか定かではないのですが、モカ縫いはライトアングルステッチに近い縫われかたです。
もでぃふぁいど の個体は特にそうなのかもしれませんが、この縫いかたはモコモコ感もグリーンやオールデンより控えめです。でも離れて見るとしっかり主張してきます。
これの断面はこんな感じ。
ダブルライトアングルとでも言うのでしょうか。縫い合わせる革の両方の表面を貫通しています。
先に挙げたタッセルローファーのモカもこの縫われかたです。
スキンステッチ!!
ハントのトゥは正真正銘のスキンステッチです。
んー、文句なし!!!!
ワックス塗りたいです。(塗った)
まとめ!
というわけでみなさん好みのスキンステッチは見つかりましたでしょうか?
もし靴をオーダーする際に好みのスキンステッチがあれば、このページをご活用くださいね!
しかし勇み足で書いたわりには、いつかの製法比較に比べてあまりに情報が少ない絵に……笑
今日のモディファイ!
スキンステッチ……。好き。
へぇ……新品のドーバー152,800円……ふーん。……ふーん。そうなんだ……。ってマイサイズ売切れ……!!痛恨の………売切れ…………!!!!!
ドーバー、ついうっかり足元に来ちゃいがちなのめっちゃ分かります笑
革靴にハマり始めて半年くらいで既にラインナップの中にいました
11taichoshoeshineさま
いつもありがとうございます!
いつかは……と憧れつつもふと靴棚に紛れ込みますよね。笑
ライトアングルステッチの違いって気にしてる人や書籍が少ない気がします。いいとこついてますね!
ハントのステッチはまさにダブルライトアングルステッチと言うような革の断面のみでついでいて迫力ありますよね。
ただハントのこの縫いってやはり構造上ひっぱりに弱いみたいで、ウエストン特有のタイトフィットで選んだ人のモカがボールジョイント付近で割れているのをネット上で見たことあります。
店頭でも一度、前の方がタイトフィットで試着されたのかやはり親指付け根付近のモカ縫いが割れている個体も見たことありますね。
ハントはほぼハンドソーンでほとんど沈まないですし。ボールジョイントがタイトすぎないジャストフィット選ばないと履いてるうちにモカ縫いが開いてくる原因になるみたいです。
通りすがりのチワワさま
コメントありがとうございます!
それぞれの方法で、けっこう見た目が違いますよね。
スキンステッチはおっしゃる通り、結局断面を縫うことで革の厚さ半減くらいの耐久性なのでは??という気がしています。
ハントはなおさらですね。比較的ボールジョイント付近には余裕のある木型だと思いますが、そういう観点もあるかもしれませんね。
わたしの場合はボールジョイントはそうでもないのですが甲が激烈フィットすぎてこれ以上サイズを下げると足が入りませんでした。笑
……まぁすでに若干モカ開いてる気もしなくはないですが。笑