良いシワ、悪いシワ、そんなの人の勝手!!
100履いて、改めて考える革靴のシワ
さて、今回は最近お問い合わせいただいて、ふと考えた革靴のシワについてです。いや、今までずっと考えてきたのですが、きちんとまとめたことはありませんでした。
こんなん趣味かつ、個人の考えなんで正解はないのですが、その上で言えば個人的に靴のシワはかなり気になる性質です。
たとえば、色々考えてデカ目で購入したジョンロブのPHILIP2。
デカ目で買っていることから、そのまま履き下ろしてもナナメのシワがガッツリ入ることが想定されました。(もでぃふぁいど は小指側が薄い足らしく、リラックスフィットの靴はすぐ斜めのシワが入るのです)
その対策としてシワ入れをして、バッチリ良い感じに2本平行にシワが入っていたのですが、意気揚々と出かけて歩いているうちにガッツリ斜めのシワに矯正されてしまいました。笑
1度入ったシワって絶対だと思ってたんですがね。。。もっと癖づけすべきだった?
なんでこの写真見るとZみたいになっているのわかりますでしょうか。

ここから時は進んで、すっかり∠みたいなシワの入り方になりましたよ。とほほ。

まぁ、足との相性を考えるとやむなし。そんなに気にせんでもという気分と、やっぱり気になるな〜!!!という気分とが交互に訪れています。
まぁそもそも良いシワ、悪いシワというのは固定観念ではなくって好みの問題ですからね。
結論:100足履いてもたしかなことは言えない!!
とはいえ、こんだけ履けばいろいろ見えてくることもあります。
個人的好みのシワもろもろ!
好みのシワ1!やっぱりほどほどに平行線
その上でどんなシワが好みかと言えば、並行に近いシワです。並行といえば、たとえばこんな形のやつ。

ここまで平行だと、やや人工的な感じもするでしょうか。でもガッツリ斜めにシワが入るよりは、やや人工的であってもこの方が精神衛生上ずーーーーっと良いです。笑
後述しますが、足と木型の相性が良く、サイズがジャスト〜タイト目だとコレに近いシワが入ります。
好みのシワ2!モコシワ!!
カーフでいうなら下のようにモコっとした感じのシワも好みです。上の2本ジワよりややリラックス目のフィットのときに入ります。

もでぃふぁいど としては、このくらいのシワが入る靴が今のところ1番好みのフィット感です。1日の中でも、長期間という意味でも、長く履くにはちょいリラックスくらいが良いって。
(感覚がかなりタイトに寄っていたようで、普通のフィット感と思っていた靴を職人さんに見てもらったらけっこうタイトですね?といわれた人)
上の写真は意図して曲げているところでしたが、置き画≒履いているときはもっと自然です。

好みのシワ3!コードバン!
これはもう、問答無用で好きですが、もでぃふぁいど としては鬼門でもあります。ホンッッッッッットにうまいことシワが入りません。笑
足が薄い人間がコードバンと言えばのオールデンにキレイにシワを入れるのは難しいのです。
個人的に会心の出来だったのはこちらのVチップ。

独自方法、ホットタオルで柔らかくする方法を開発してまでシワ入れしてますからね。うまくできて良かったです、マジで。
コードバンの波打つようなシワは魅力的ですよね……!!
個人的に革靴のシワの入りかたについてわかってきたこと!
シワの方向に影響するもの、その1!足と木型の相性(とサイズ)
上で見た通り、シワを平行に入れたいと思えば、
- シワが入る部分と足の甲の厚さが合っている木型
- ↑の木型でもジャストサイズのもの
という靴を選ぶ必要が出てきます。が、これ、既製品から選ぶのはメチャメチャ難しいです。

たとえば、フィッティングのプロであるシューフィッターの方も、甲やカカト、幅のフィッティング=快適に歩くために必要な箇所のフィッティングは見てくれます。
が、快適に歩くにあたって、他があっていれば靴のヴァンプ(=甲、シワが入るところ)に余裕がある分にはOKです。だってヴァンプの余裕は歩き心地履き心地には、あまり影響しないからです。さらに言えば、そこを重視してヴァンプに余裕があるからとサイズを下げたら、カカトや甲がキツくて履けない/歩きにくいなど、クレームもののデメリットが発生するので、こりゃもう他の要素を優先するのは当然です。
だから、各個人に「この木型ならこのサイズ!!」という最適解はあったとしても、そのサイズでシワが綺麗に入るかは、まったく別問題なんですよね。
たとえばChurch’sシャノンのこちらのシワ。この靴の木型(103ラスト)の特徴として、足の甲はかなりルーミーというか、余裕があります。少なくとも、もでぃふぁいど の足だとかなりの余裕があります。なので、シワはベコっと凹むようなシワになり、まったく並行なシワではありません。

だからといってここからサイズを下げると、もう羽根がぜんぜん閉まらなかったり、カカトが入んないまであります。笑
70Fでもじゅーぶんタイトなんですよ。ヴァンプ以外は。
こんな感じで、モデル(木型)によっては「そもそも好みのシワを出すのがムリ!」というものもあります。
もう、そのあたりは足と靴(木型)との相性、つまり運命としか。
(ちなみにシャノンのシワはなんだかんだコレはコレで気に入っています)
シワの方向に影響するもの、その2!足とデザインの相性
こればっかりは他の方はどうなのかわからんのですが、同じ木型でもデザインによってキレイにシワが入りやすいものと、入りにくいものがあります。
もでぃふぁいど の得意科目(デザイン)はUチップです。EGのドーバーしかり、

J.M.WESTONの641ゴルフとか。

Uチップ、モカがあるものはけっこう好みのシワが入りやすいです。うん、いいかんじです。(まだきついけど)

逆に苦手科目はプレーントゥ。これは上のシャノンでも述べたとおりです。
プレーントゥは選ぶモデルがボリューミーでカジュアルなものが多く、甲が薄いもでぃふぁいど の足と合わないことが多いのでしょう。
逆にドレッシーかつ足に合っているLIGHTBULBの木型ならプレーントゥでも良い感じにシワが入っている気がします。

キャップ系は良い感じにシワが入るサイズだと、親指の根本を噛まれがちです。だもんで結局、親指の高さに甲を合わせざるを得なくなり、小指側は甲に余裕ができてべコンと凹むという……そんな感じの足なのでしょう。これもまた足の個性なり。

シワのきめ細かさに影響するのは革質!
革の種類
シワの太さ、というか、きめ細かさですかね。気にされる方も多いでしょう。
これはけっこうモロに革の質が効いてきます。繊維が密に詰まっているものはシワも細かく、

繊維が粗く疎な革を使っていると荒々しいシワが入りやすいです。

大まかな傾向としてドレスシューズに使われるカーフやキップなどの子牛の革は薄くしなやかで、きめ細かいシワが入ることが多いです。

逆にタフで分厚い成牛の革は荒々しいシワが入ることが多いです。

これはどちらが良い悪いではなく、プロダクトとの相性かと考えています。個人的にドレスシューズならシワはきめ細かい方が良いですし、タフな靴なら荒々しいのもOKです。上の例で言えば、パラブーツに求めるのは荒々しいモコジワです。じゃないと台風の中とか履いて行く気が起きなくなると思います。笑
まとめると、カーフやキップのシワはキメが細かく、カウハイドなどの成牛の革は荒々しいシワになりがち!という感じ。
革の部位も影響する!
同じブランド、同じモデルであっても使われる革の部位によってシワの入り方が変わってきます。
たとえば同じカーフでも、背中側の繊維が密なところが使われていればシワも細かく、腹側の繊維が疎なところであれば大雑把なシワが入ってきます。
背中側の革はもちろん良い部位なので積極的に使われるのですが、腹側の革をどこまで使うかはブランド次第です。使わない部分はそのままロスになるので、良い部位だけ使うというのは贅沢なことです。(1枚の革からできる靴の数が少なくなる)
そのため、現金な言い方をすれば高級なブランドほどキメが細かいシワが入る良い部位のみを使っている傾向はたしかにあります。
また、良い部位のみを使うので左右差が少ないのも高いブランドの特徴になるかと。これもなんとなくの経験則と一致します。
では、お買い得なブランドはダメなのかというともちろんそんなことはありません。ただ、当たりを見つける必要が出てくるというか、ハズレを引かないようにする必要があるというか。
当たりを引けば、分厚い成牛の革でもきめ細かいシワが入るケースもあります。下はクロムエクセルですが、もともとオイル豊富で柔らかい革ですが、染色がされてないことなども相まって、非常にきめ細かいシワが入りました。

これ、パッと見分けられれば良いんですが、実際にはかなり難しいです。下のサンダルは、左側の方が良い部位、右は腹に近い部位が使われています。ツヤや柔らかさ(ハリ)に差があるのが写真から……わかりますかね?

このくらいシンプルなデザインで、革自体もナチュラルな仕上げならわかりやすいかもしれません。
実際には革靴は仕上げのポリッシュもされて出荷されますし、プレーントゥのような大きな面積でわかりやすい靴ならともかく、Uチップのようなパーツが細かく別れているような靴だと、そこまで見てらんないぜ!という気分にもなります。
個人的にはUチップはうまくシワが入るので良いっちゃ良いんですが、革の部位まで見極めて購入するのは難しいと感じています。
繊維が粗いところは触った感じ、ボソボソというか乾燥しているようなニュアンスなのですが、そんなに靴ベタベタ触ってから購入っちゅーわけにもいかないことも多いですし。
左右差含めて確実なのはビスポーク!!
もうゼッタイ左右で同じシワを入れたい!というところにこだわり出しちゃうと、最後行き着くのはビスポークです。
もでぃふぁいど 個人の経験から言えば、仮靴の時点で「ウワァ何この履き心地良い靴!?」というレベルだったのに、「左足のヴァンプはまだ攻められますね」「そうなんですか!?」てな具合で鮮やかに修正箇所が決まっていきました。
そもそも人には利き足があります。利き手ほど意識する機会はありませんが、歩き出すときに踏み出す足、階段を登り始める時に出す足。そんなのを諸々含めた歩行のパターン。
こうした細かい積み重ねで筋肉のつきかたが異なるので大なり小なり人の足は左右差があることが一般的です。
既製靴は形こそ左右反転していますが、左右の甲の高さが違うとか、そういう差はありません。靴売り場に行っても左利き用の靴とか、右利き用の靴とかありませんでしょ。
その点ビスポークは採寸結果をもとに仮靴まで作って本縫いに進むので、そりゃ左右対称に近いシワが入りますよね。というかもはやもう、革のキメが細かすぎてシューツリー抜いてもシワが目立ちません!!!

もちろん職人さんにもよるので絶対とは言い切れないのですが、1番確実な方法なのは間違いないです!!
ビスポークというと遠い世界のようですが、ジョンロブのフィリップを定価で買うよりも懐に優しい工房もあります。オススメです!!
シワ入れナチュラルな範囲でする派
以上を踏まえて、もでぃふぁいど はシワ入れの儀をするかというと、現状、ソフトに執り行っています。
靴と足の相性次第では「冗談きついぜハニー……」みたいなシワが入ることもままあるので、あまりにもヤバげなときはペンでガイドを入れる感じでしょうか。

道を大きく外れそうなときにはそっと助ける。我が子への愛情と同じですね。たぶん。
しかし、それで失敗したPhilip2を鑑みると、この方針は考え直さねばならないかもしれないですね。。。
愛着があればなんでもOK!!
とまぁ、色々言ってきましたが、「最終的には幸せならオッケーです!」というやつです。
事実、先ほどべコンと凹んだシワで個人的にはイマイチと言ったChurch’sシャノンですが、7年以上履いているので、もう何も思いません。こういうもんなんだなと。笑

逆に、うまくいったシワ例のJ.M.WESTONゴルフ(8年選手)やEDWARD GREENドーヴァー(6年選手)についても、いま改めて眺めてみると「ええシワやん」としみじみ思うのであって、ふだんそんなに気にしていませんでした。

シワというのはあくまでも革靴の1要素であって、個人にとっての靴の印象を全て決定づけるものではないのかなと。
あちゃーやっちまったなぁ!というシワでも、フィッティングその他に不満がないのであれば、しばらく履いているうちに気にならなくなるかもしれません。
人の靴と比べない!!笑
ただしオールデン、てめーはダメだ!!!
というわけで大事なのがコレ!人の靴と比べないことです!!!笑

特にコードバンの靴、オールデンなんかに顕著ですが、instagramなんかで流れてくる写真って、各人渾身のシワを持つとっておきオールデンが、もっとも映える角度から撮られた写真の集合体です。
なんでまぁ、他人のオールデンは魅力的に見えるというか、「隣のコードバンはモコシワ」状態になりがちです。
こうなるとコードバン靴買い漁り街道まっしぐらなので、他人の靴を見るのはほどほどにした方が良いと思います。(強く自戒を込めて)
じゃなきゃVチップ
買い直したりせんて!!
今日のモディファイ!
靴のシワについて長文で語ってきました今回、いかがだったでしょうか?これを読まれた皆さんが良き履きシワライフを送れることを心の底から祈っています!!
ところでこのVチップ、けっこう良い感じにゆったりとシワ入りましたよね?

革靴のシワ、履き込まれた靴の象徴でもありますよね。
履き込まれた靴がちゃんと手入れされていると、同じ靴でも新品には絶対にないカッコ良さ・雰囲気があって、いいなぁと思います。
おっしゃるようにシワの細かさ・深さは革質によって大きな差がありますね。
革質が今一つ良くない靴では、私の場合まず小指寄りのシワの端がクラックへと変化し、次に親指側のシワの端でクラックが発生するといった経験がありました。
私の乏しい歴史の中で思い起こしてみると、黒靴で茶靴より早くクラックが起きやすい傾向があります。黒だと革のキズが目立たないこともあるので、黒革には茶革より質が低い革が使われているんじゃないか、と思ったこともありますが、同じ靴メーカーでも黒革と茶革ではタンナーが異なったりすることもあるので、タンナーの違い・鞣しの違いもあるのかな、と思っています。
気づいたら、シワからクラックの話に変わってしまいました。
失礼しました!
hanaishiさま
いつもありがとうございます!お返事遅くなってしまいました。すみません。
シワはいいですよね。私も新品の靴より履き込まれた靴の方が好きですが、いかんせん靴が多くなかなか育たないのが悩みです。。。
そしてクラックに関する考察もありがとうございます。これもいつかは向き合わなくてはいけない問題ですね。
特に黒茶で差があるのが興味深いです。服の生地は染料の関係で黒い方が硬いそうですが、革もそうなのでしょうか?(黒が硬いとすると割れやすいのも納得かなと)
ただおっしゃるように、タンナーやなめしの違いもあるのでなんとも言えませんね!
クラック初心者なのでまた色々教えてくださると嬉しいです!
レスありがとうございます!
今回黒靴に早めにクラックが入ることを久々に思い出して、きっと他にもそう思っている人がいるんじゃないか、と勝手に思い込んで検索してみました。すると、やはりありました!
Room Style Storeというページのブログの2021/06/07「黒靴の思い出」で、「茶色の革より黒の革の方が全般的にクラックが入りやすいと思う」と。まさに我が意を得たりです。
すごい靴ばかりが並んでいて、有名ビスポーク靴ばかりでしたので、革自体の品質が茶より黒の方が低いということはなさそうです。染料の可能性も結構あるかもしれません。
このあたり、靴職人さんや修理屋さんにお聞きできれば、と思っています。
hanaishiさま
Room Style Storeさん、拝見してきました!なんて眼福なブログなんでしょう……!!笑
革の硬さについては、タイミング良かったのでLIGHTBULB外林さんにも聞いてみました。
「基本的に革も黒は色を濃く、しっかり定着させるため硬くなる傾向があります」
ということで、なんとなく予想は当たっていたようです。
ロリス・ローゼンミュラーのHPには
「革の繊維層まで染料が入り込むと強度が落ちる」
ともありますので、併せて鑑みるにやはり固くなることで将来のクラックに繋がりやすいというのはあるかもしれません……!!
もでぃふぁいどさん、外林さんにお訊きいただいたり、リス・ローゼンミュラーのページをご確認いただたり、本当にありがとうございました。
黒い革が茶より硬くなる傾向があるとのこと、勉強になりました。靴を作る上で、同じタンナーの革でも色で何か違いがあるのかもしれませんね。MTOやビスポークだと、こういった会話ができるから、楽しいですよね。