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靴をバラすことについて
グッドイヤー(今回の靴はハンドソーンですが)、の靴をバラすこと。これは、ブログをやる上でいつかはやってみたいと思っていました。
とはいえ、オールソールしながら長く履いていける靴をバラしてしまうのはもったいないことです。まだ履けるのであれば履くべきだと考えています。(あたりまえだ?)
そんなわけで、ブログを初めて以来そんな機会はなかったのですが、ついにその機会が巡ってきたのでした……!!
妻のジャランスリワヤのビットローファー
ここに7年履かれた妻のジャランスリワヤのビットローファーがあります。
もでぃふぁいど が買ったものですが、よく履いてくれました。(7年前の恩を売っていくスタイル)
靴好きは自然と靴が増えてくるので最初の方に買った靴の登板頻度が落ちる……という「あるある」がありますよね?
が、妻は誰かと違って靴バカではないので、コイツは5年くらい、晴れの日も雨の日も年200日は稼働していました。連続着用はあたりまえ、獅子奮迅、孤軍奮闘の大活躍です。途中ウエストン180.も入ったものの、ここまで気軽に履けない、ということで着用頻度は落ちなかったそうな。
(また、ここ2年は跡目を譲られた靴が同じ頻度で活躍しています。)
で、そんな履きまくっていた靴をなぜ履かなくなったかと言うと、もっとも大きな原因は型崩れです。
写真の角度からだとわかりづらいのですが、右足が外側に倒れるように傾斜がついてしまっている状態です。左足と比べるとちょっと右足の形が歪なのがわかりますでしょうか?ハーフラバーも外側から減ってしまっています。
靴全体が傾いてしまっているため、ハーフラバーを貼り直すだけだとラチがあかないので、オールソールならなんとかなるのか?と修理屋さんに相談してみましたが、なかなか厳しいらしく。
また見ての通り、踵に市販のパッドを充てているくらいには緩くなっており、ずっと履いていると腰が痛くなってくるとのこと。
もでぃふぁいど も妻に腰を痛めてまでこの靴を履いて欲しいとは思いませんし、年あたり稼働日数を考えれば7年……じゅうぶん頑張ったでしょう。
一般にハンドソーンやグッドイヤーのアウトソールの張り替え(オールソール)はアッパーにダメージを与えるので、いつか限界が来ると言われていますよね。
ならば、ハーフラバーを張り替え続けてオールソールの回数を減らせば永遠に履けるのでは??ということを考えた靴好きも多いのでは?もでぃふぁいど もそんなことを思っていました。(この考えならマッケイも良いんですけどね)
そんなわけでこの靴は、ハーフラバーを張り替えて7年やってきましたが、最後は型崩れで履けなくなるのかぁ、と言う感じです。
その他、ごまかしごまかしやってきましたが、アッパーには切り傷もありますし、シワも結構深いです。(シワは試着前からすでにこうだったのですが、妻は気にしないということでしたし、足には合う、とのことだったので黙って買いました)
まぁ、よく履き、履かれて、支えられ、支えていたのだなと少し感慨深いものがあります。他人の靴ですけど!!
そんなわけで、このまま捨てるのはもったいない、せめてこのブログで殿堂入り記事として記録することで弔おうと、そういうわけです。
そして妻に必要なのは新しい靴ではなくオーダーインソールだなぁ、と思っています。
ジャランスリワヤのアウトソールを少し剥がす!
とはいっても、もでぃふぁいど も靴をバラすのは初めて。道具も革包丁とワニっぽいやつしかありません。(あるのかよ)
あとは気合いでバラします。まずはアウトソールから!!!
こんな感じでソールとウェルトの境目あたりに革包丁を差し込み、出し縫いの糸を切りつつ剥がしていきます。
革包丁だとウェルトもさっくり切ってしまうのでプロはカッターとかでやるんでしょうね……。
革包丁、切れ味こんなよかったっけ?、と思うくらいあっさりとアウトソールが剥がれました。コルク、しっかり入っていますね。
で、トゥスチールが外れません。ネジの頭は擦り切れてドライバーじゃ外せないですし、ネジが食い込んでいるようなので力づくで引っぺがすのも無理そうです。これ、オールソールするとしたら、どうするんだろう……。
ジャランスリワヤのヒールの積み上げを剥がす!
次にヒールを……ぐぎぎ……ぐ……剥が……剥がして……
めっちゃしっかり接着してある!!!
そりゃそうだ、カカトには接地時にものすごい力がかかります。それでも吹っ飛ばないくらいの接着力。
なお、7年の着用でかかとはもちろん減ったので数度ビブラムのラバーヒールで交換しています。
カカトの修理ってオールソールよりお安いですが、こりゃ思っていたよりずーーーっと大変だぜ。
ラバーをやっとこさ剥がしました。
そのまま積み上げも剥がします。
いちまーーい!!
にまぁぁぁぁぁぁい!!!!
この2層目〜3層目の積み上げは釘……というか溝も切ってあるのでネジ?が効いていてものすごく取りづらかったです!!!
めちゃめちゃ力をかけないと取れないわけですが、片手はワニ(と剥がすヒール)、もう片手はアッパーを持つしかありません。
どうしたってアッパーに力がかかります。
なるほど、ヒールは1層目が減ったら交換、というのは理にかなっているわけです。そこで替えておけばアッパーへのダメージはまだ少ないと。
ジャランスリワヤのアウトソールを完全に剥がす!!
さて、積み上げが剥がせたので次はアウトソールを……といきたいのですが、ベロンチョした前半分は簡単に剥がせたものの、カカト周りがあんまりにも外れません。なのでカカト部分を残していちど切っちゃいました。
アウトソールのカカト部分は残ったまま、残りを切り離して剥がした図。
引き続きカカト部分のアウトソールを……!?!?
ウェルトが剥がれちゃいました。アウトソールの接着強度すごいです。
でもなんとか剥がした図。カカトまでコルクがしっかり入っています!!!
ちょっとカカト部のウェルトも外れちゃっていますが、アウトソールを完全に剥がし終えました!!踏まず〜カカトにかけてのコルクは意外と潰れ切っていない印象です。逆に、つま先〜ボールあたりはカチカチ。
成分とか分析できないんでわかりませんが、つま先部には土や砂が入り込んでいる??
カカト部分のアップ。
360度グッドイヤー(ダブルウェルト,縫い回し)ではないので、カカト部分のウェルトを釘で固定しています。このあたりは釘とかネジとか多いです。ケガに注意!!
ジャランスリワヤのシャンクは鉄製!!←すごくない?
シャンクとは、靴の踏まず部分の強度保持のために挿入されるパーツです。昔は木や皮革、今ではスチールやプラスチックのモノが多いとのことですが……。
取り出してみました。
硬めのボール紙のようなパーツも外して、中から出てきたのは……!!
スチールシャンク!!!
磁石もくっつきましたので、しっかり鉄です。ジャランスリワヤ、リーズナブルなイメージですが、今のところ、妥協が見えません……!!
(オールデンみたいに空港で引っかかるのだろうか?)
ともかく、目に見えないところもコストをかける姿勢、感動します。
しかしそんな鉄製シャンク……
なんと折れている……!!
これはシャンクの強度や質うんぬんではなく(そんなもんはわからん!)、単純に履き込んだからこそ、そしてそんな力がかかっているのか……!!という驚きがデカいです。
鉄製でも折れることはある、と話は聞いていましたが、実際折れているのを見ると「マジで?」と言う感じです。鉄だぜ。力入れても曲がりませんよこれ?
シャンク、お前は立派に務めを果たした……!!お疲れ様……!!!
オールソールすれば交換してもらえると思うので、そういう意味でもオールソールは必要かも。
ジャランスリワヤのインソックを剥がす!!
お次はインソック。こちらを剥がすのは楽でした。交換も想定されているパーツだからでしょうか。
皮革風の素材に、デカ目のスポンジ。
オールデンにもスポンジは入っていましたが、ここまでデカくはなかったです。単純に履き心地が良さそう……!!
これがクッション性をもたらす一方で、履き込んで潰れてしまうと緩くなってしまう原因になり得るかも。ジャランスリワヤ、すごい沈む、という話も聞きますが、原因これなら、インソック交換でけっこう改善するかも??(最初はめっちゃキツかったのに、いつしかカカトパッドが必要なくらい緩くなっていた、と妻も言っていました)
なお、剥がした下には個体番号?とヒールの積み上げを固定する釘が。でもコイツ、ネジ切ってあるのでめちゃめちゃ強度高いんですよね。
この、靴側から出ているぶっといやつです。
ジャランスリワヤのウェルトを外す!
上の写真でヒール部のウェルトはだいぶ取れちゃってますが、そのまま進めていきます!
ウェルトはヒール部ではめっちゃ釘で留めてあります。釘バットってこんな感じ?ケガ注意!!
黒い糸が2本。すくい縫いの糸です。端っこの処理はこれが普通なのかわかりません。
ウェルトの切れ目。ここから1周糸を切りながら外すのが正しかったのだと思います。(カカトで苦戦しすぎてちぎれた)
ハンドソーンにおけるすくい縫いは、ウェルトと中底を縫うもの……と普段考えていたのですが、ウェルトから中底に至る間にアッパーとライニングも貫通しています。
あらためて表すなら、「すくい縫いは、ウェルト、アッパー、ライニング、中底をまとめて縫うもの」ですね。
なので、見た目としてはウェルトとアッパーをつなぐ糸を切っていく感じです。
で、外れました。これもカカトの釘以外はすんなり。意外と縫いのピッチは広いです。(ピッチが狭いと工作の切り取り線の如く強度が落ちます)
ジャランスリワヤはちゃんとハンドソーンしてる!!(あたりまえ)
で、すくい縫いの糸を外していったわけですが、赤丸の部分。
ウェルトは外したので、アッパー、ライニング、中底を掘り起こした部分、という3つの層の下にすくい縫いの糸が走っています。
グッドイヤーウェルト製法は中底に縫い代となるリプテープを貼る製法ですが、ジャランスリワヤはハンドソーンなのでそれがありません!!
ちゃんと、ちゃんとハンドソーンしてる!!!
この価格ですごいなぁ、すごいなぁ、と感動しきりです。
そしてこの形……ラスティング、木型に吊り込んだときの状態ですよね。釘こそ留まっていないですし、木型も入っていないですが、ほぼ。なんだか良い感じです。カカトからエッグい釘出ていますが
ジャランスリワヤのアッパーをはずす!
ワニでグイグイと。すくい縫いの糸も切ってあるので、スイスイ進み……
やっぱりカカトのあたりが無理!!!!どーしたってここの釘が外れません。上から下からいろんな釘が留められていてタイムアップ!!
子どもの面倒も見ずに靴解体に明け暮れるのはここまでで限界でした。笑
なので最後はこの部分をカットして中底を外しちゃいました。
まぁ頑張ったぜ!!
ちなみに片付けがてら少しだけ延長戦した結果、月型芯は見られました。さすがに革ではないようです。
樹脂を塗った布のようなもの。温めると柔らかくなるので、それで成形して、冷えたら固まると。
というか、部材としてはもうカカトの形に成形されたものが売っているので、量産するならコレだよね、みたいなポジションらしいです。
ジャランスリワヤをバラしてみた感想!!
ジャランスリワヤ、すげー!!!
まず、ジャランスリワヤ、すごいです。
この靴、当時3万円台ですよ。それでハンドソーン。
何か部材をケチってるとか、ハンドソーンと言いつつどこか簡略化されている、というようなことも考えていたのですが(疑り深すぎ?)、ちゃんとハンドソーンしていました。ちゃんと中底に溝掘って縫ってある!!
プラスチックとか出てきませんでした。シャンクだってちゃんと鉄!!!
プロの人が見たら思うところもあったりするのかもしれませんが、難しいであろうカカトの吊り込みもぐちゃぐちゃになったりしていません。モノとして美しいとさえ感じました。
よくユニオンワークスさんのブログを見ていると「(チャーチの作りがいいのは)すくい縫いの糸と出し縫いの糸がこんがらがっているような個体がない」「意外とこんがらがっているメーカーも多い」というような記載が見られます。
その点、ジャランスリワヤのこの靴は、きちんと2つの縫糸が別になっていました。出し縫いは出し縫いだけでサラッと切れましたし、すくい縫いもそう。接着剤も使われているのか?というレベルでわかりませんでした。マジメに釘と糸でできている。
またまたユニオンワークスさんのブログからですが、「トリッカーズ などは接着剤をできるだけ使わずに作られているので修理しやすい」みたいなことが書いてあった気がします。たしか。
ジャランスリワヤもそうっぽい!!!と言いたいです。
ジャランスリワヤは、靴として上を見ればまだまだ上はたくさんあるクラスという認識でしたが、総じてきちんと真面目に作られているという印象で好感度爆上がりでした!!!
ハンドソーン/グッドイヤーの優れているところを実感!
ハンドソーンウェルテッドやグッドイヤーウェルテッド製法の優れたところとして、アッパーに負担をできるだけかけずにアウトソールのみ交換できること、が挙げられます。
これもまたユニオンワークスさんのブログからですが……え?ユニオンワークスさんからの引用が多過ぎる??
いや、だって、修理の面から靴の作りがどうこう書いてあるサイトって当時あまりなかったんですよ。
ともかく、「靴として修理する部分がバラしやすいのは良いこと」と書いてあったのを覚えています。その方が、他の部分に負担をかけずに作業できるからだと。
その点、今回バラしてみてアウトソールは出し縫い切ったらベロンと剥がれますし、
ヒールの1層目を剥がすのは、大変と言えば大変でしたが、そのあとの釘まみれの2-3層目、中底とアッパーに比べればまだマシでした。
なので、靴本体(特にアッパー)へのダメージとしては
ヒール交換(1層のみ)<ヒール交換(丸ごと)<オールソール<ウェルト巻き直し<中底交換
というのをまさに手で感じられたというか、バラしにくいところに手を入れなきゃいけない修理ほどダメージがあるんだな、というのを実感しました。
アウトソールのカカト部分など外す際は、ものすごい力をかけないと剥がれない……というか、もでぃふぁいど はもはやウェルトから剥がれてくるみたいな地獄だったので、これは修理でこうなっちゃったらえらいこっちゃです。
手にマメまで作って解体した身からすると、気軽にオールソールすりゃいいじゃん♪とか言えません。ハーフラバー派になりそうです。でもシャンクの状態もあるしな。難しい……!!
職人さんと製法の歴史、リスペクト!
バラすのは、まぁ、力があれば誰でもできます。
でも、バラすだけでも大変な、この強度で靴作るのってもっと大変なはずです。
はずです、というか、革でサンダル作ったときに「もう2度とやるかこんなもん!!」と思うくらいには大変でした。笑
アッパーはまだしも、ソールや中底に使われるような分厚い革を加工するのって本当に大変です。機械を使うにしたってノウハウが必要でしょう。
それに、バラすのは品質とか気にせんで力づくでバラせば良いですが、作る際にはアッパーを傷つけないように、とか色々気を遣います。
まず、人が履いて、長い時間付き合えるような靴を作ってくださる職人さんにリスペクトを!!
そして、ハンドソーンにせよグッドイヤーにせよ(マッケイでもノルベでもいいですが)、結局、人が望むクオリティを実現できた製法だけが今の世に残って伝わってきている、ということを想うと、歴史の重みというか、ロマンを感じます。
先人の教えに生かされているのだと、疲労感がハンパない身体で感じています。
そして、これを綺麗にバラし、綺麗に作業して組み上げる修理屋さんもハンパないなと思います。
もうこれ、どうしたって組み上がらんですもん。
ありがとうジャランスリワヤ、ありがとう作った職人さん、ありがとうシャンク割れるまで履き込んだ妻!!!
もでぃふぁいど は、このビットローファーを忘れないぜ!!
今日のモディファイ!
ちなみにいつかこれでビットローファーオーダーしたら超ステキやない?と思ってビットだけ取っておきました。これもしっかりズッシリなパーツで安っぽさはゼロ。
が、妻からは「変わり果てた姿に…」「サイコパスの所業」など散々な言われよう。猟奇的?インモラル?これは??どうなの?????
ジャランの輸入をしているGMTの靴に詳しい社員さんに聞くと、ジャランは「グリーンかぶれなので接着剤使わないから、水に付けてると勝手にバラバラになるよ」と教えてもらった事があります。
色んな意味で、低価格なのにこだわりの詰まったメーカーに思います。
普通の店長クラスの方だと全然靴に詳しくないからか「ハンドソーンだからコルクたっぷりでよく沈みますよ」と意味のわからないセールスをかけられる上に、アウトソールには「Goodyear Welted」と書いてあるという、色々勿体無いメーカーでもありますが。
私も一番気に入って履いてるのがジャランで、革もいいし、良い意味で雑な作りが雰囲気あって良いんですよね。
ていうか、インソックって「革風」なんですね。
昔履いてたジャランのインソックは何もしなくても飴色になった記憶がありますけど、確かに最近のはならなくて、革じゃないからなんでしょうか?
なんか意外です。
ささみ120gさま
いつもコメントありがとうございます!
おっしゃる通り、まさにプライドを感じられる作りでした!グリーンかぶれだとしても、それを実現できる技術力があるのが素晴らしいですよね。(しかしGMTの詳しい社員さんにお話を聞く機会があるささみ120gさま……一体何者……!?)
今回のモデルのインソックは明確に「革風」でしたね……。裏が人工的な格子状のテクスチャでした。
メンズ/レディース、年代で差があるかもしれませんが、ここまでこだわるなら、インソックも革が良いですね!!