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初のビスポークシューズ到着前夜に記す

このご時世ですので、完成後送っていただきました。

ビスポークシューズ到着前夜に記す

オーダーまでのもろもろ

思い返せば昨年は大変だった。

妻にも言われている通り、今となっては勝手に自己都合で会社を辞めただけとも思えるが、ともかくバタバタした。

そんな記事に対して一定程度厳しいコメントも覚悟していたが、実際いただいたのは暖かい励ましのコメントばかりだったことを思い出す。

当時コメントいただいた皆様、大変ありがとうございました。おかげさまでなんとか靴ブログも続けることができています。

顛末は思い返してもあまりハッピーな気持ちにはならないが、前職場の周りの皆さんは非常に良くしてくれたので皆変わらずお元気であってほしい。高齢の方も多かったので。

件のクビ記事は、最近のブログのアクセス数を見ても毎週上位に上がってきている。

流入に関する検索ワードを見ても、それっぽい単語は挙がってこない。もはや2021年1月のアーカイブをピンポイントで漁らない限り見つからない気もするのだが……いったいぜんたい、みなさまどこからあの記事を?

それはともかく、ややもすれば3ヶ月後から職を失うというリスクを背負った転職活動は焦燥感に駆られることも多く、もでぃふぁいど のテンションは1日おきに日本海溝から富士山まで往復し、その気圧水圧差で堪忍袋も破裂寸前、妻や子どもにもさぞ負担をかけたことかと思う。申し訳ない。

そんな中にあってなんとか転職が決まったあの日のカタルシスたるや筆舌に尽くし難いが、2度味わいたいとは決して思えない。

転職が決まった翌日たったか、晴れやかな気持ちで妻に「頑張ったからなんか自分にご褒美したいです」と正直に吐露したところ、「ダラダラ買ってると余計に出費が増えるから、ガツンと本当に欲しいもの買っちゃえば?」と頼もしい返事をもらった。

「じゃあ、靴、作ってもらっちゃおうかな…」に対して、「良いんじゃない?」の返事。

妻は靴好きがガツンと靴を作ったらどうなるかなんて興味がない。まさか夫が足型から起こしてこようと目論んでいるとは夢にも思わないかもしれない。しかし、もでぃふぁいど は嘘は言っていない。靴を作るの範疇である。至極真っ当だ。

こうして、もでぃふぁいど は当時未だ見ぬ退職金への期待だけを握りしめて、Kiyo Uda氏の元を訪れたのだった。

オーダーを思い返す

それはもう、色々考えて行った。仕様はどうしようか、革は?デザイン?ソール?メダリオン??

伺う約束の当日はあいにくの雨。もでぃふぁいど は革靴好きなくせに雨男なのである。なのでVASSのスエードチャッカブーツを履いて行った。

何よりこの靴は適度なフィッティング具合なので、足のサイズを計測する日にも安心だ。以前、ウエストンのローファーを履いて行ったら足が縮んでしまっていて、えらい小さいサイズを勧められたことがあった。普段UK7Eを履いてるのに、UK6.5Dとかに足が入ってしまうのだ。

この経験があってからは、靴の試着の際に履いていく靴に気を遣うようになった。むしろウエストンを避ければ良いだけかもしれない。

ビスポークの履き心地はまだわからないが、VASSはハンドソーン製法で作っているし、ビスポーク職人であるロベルト・ウゴリーニ氏が手がけたFラストはその履き心地に肉薄しているのでは?というのもあった。

これは結果的に正解だったように思う。

Kiyo Uda氏の工房に上げていただくとすぐ、VASS氏の名著「Handmade shoes for Man」が目に入った。VASSの質実剛健な姿勢は履いていてわかるくらいで個人的に大好きなブランドである。

正直に言ってこの「Handmade shoes for Man」という本は、ビスポークシューズの美しい技巧やディテールの数々を華々しく紹介する本ではない。

ページを開けば裸のオッサンが歩く姿から歩行に適した靴を考えるページだとか、制作途中の靴の中身や部材など決して見栄えがするとは言えないページが延々と続く。靴として出来上がったものの写真は最後の方にちょこっと載っているだけだ。

中身を知っているだけに、ある意味地味で見栄えはしないが、靴に関してはただひたすらにまっすぐ向き合う本が置いてあることに好感を持った。(この文体で書くとなんか偉そうだ)

Kiyo Uda氏のサンプルシューズはinstagramで目にしていたように抜群にカッコ良かった。足を通してみても、足全体を包み込み目が覚めるようなフィッティングに目を見張った。モノクロの世界が急にカラーの世界になったかのような、足のジョイント、踏まず、カカト、甲など、各所しっかりとフィットする、精細かつ鮮やかなフィッティングだったからだ。

置いてあったVASS氏の名著の後押しもあり、その場でオーダーを決めた。

要するに、質実剛健というか謙虚というか、基本に忠実というか、そういう氏の姿勢にやられたわけである。電車の中で、ほぞを固めていた気も大いにあるが。

これがかの「Last shall be first」だったらオーダーしただろうか?

しただろうな。置いてあったのがドカベンでもたぶんオッケーさ。

人は後付けの理由で生きていく生き物なのだ。

ビスポーク≠オーダーメイド?

あれから仮靴のフィッティングがあり、木型を見せてもらった際には自分のかかとの小ささに驚いたりもした。しかもここからまだ削るという。

また仮靴の段階で気付いても時すでに遅しだったかもしれないが、もでぃふぁいど が色々細かに考えていった仕様については知見が豊富なKiyo Uda氏に全部丸投げでも良かったと強く思う。

そもそもビスポークとは、注文者と職人とで1足の靴を作り上げていくものであって、顧客の要望を単に事細かに叶えるオーダーメイドではない。

職人にも得意なスタイルや、デザイン、仕様についての一家言があり、注文者のライフスタイルやその靴を履くシーンに合わせてそのルールを適用していくことで理想的な1足を作り上げる。そのプロセスこそがビスポークではないだろうか。

もでぃふぁいど は頭でっかちに「スワンネック」だと「ベヴェルドウエスト」だとトッピング感覚で注文していたわけだが、それはビスポークの本質とは少し異なるのでは?と今更ながら感じたのであった。(あくまで個人的な意見として)

要は、氏の作る靴のエレガントながらマッシブなフォルムに惚れて注文するのだから、ゴチャゴチャ言わずにKiyo Uda氏に任せておけば良かったのだ。

聞けばこの界隈には「黒のオックスフォードで頼む」くらいの粒度で注文する豪の者もいると聞く。

それは職人への信頼の裏返しでもある。もでぃふぁいど は初めてのビスポークだったので、ものすごく意気込んでもろもろ考えて行ったが次回は氏に丸投げスタイルでも良いと思う。

まぁそんなあたりもビスポーク初め「あるある」のひとつということで。

到着前夜

そしてついに完成の連絡をいただいた。ざっと11ヶ月。仮縫い込みのビスポークなら普通だと思う。むしろこの界隈2-3年待ちなんて話も聞く。むしろ雑に手早く仕上げてもらうくらいなら2年でも3年でも待って入魂の1足を待ちたい性分だ。

むしろ11ヶ月の間、全然待てずに相変わらず靴を買いまくっていた自分の堪え性のなさこそがアレなのだが、アレじゃないとそもそもブログなんかやってないのでアレなのはしょうがない。

妻の最初の言葉を借りれば「ダラダラ買い続けた挙句、ビスポーク代もしっかり払う」ことになったのである。スマン、妻よ。

話は逸れるが、「なんか自分、靴買いすぎ?」という向きはブログをやると良いかと。「ブログのネタにもなるから」と言って靴を買う機会がさらに増えるので。

それはさておき、初のビスポークシューズが明日には届く。

本当は工房まで伺って直接氏と話をしつつ受け取ったりその場で履いてみたりしたかったが、このご時世なのでしょうがない。子どもはなんかずっと風邪気味だし、万一のことがあって氏に迷惑をかけるのは申し訳ない。絶対に自分が罹っていないという確信は持てない。

何より職人は身体が資本だ。以前の仕事で、オーナーシェフがインフルエンザで半月ほど店を閉めた結果、そのままその月の収入が半減、みたいなケースはままあった。(実際には賃料等の固定費は丸々かかるので半減以下だ)

長くなったが、さりとて初のビスポークシューズだ。

いったいどんな履き心地だろうか。

仮靴はもらってきてしまったので手元にある。在宅勤務の合間にちょこちょこ履いていて、既に革の靴下か?というフィット感だが、これをアップデートしたとなるとどんな履き心地になるのか?

良い靴は、良い場所へ連れて行ってくれる。

今回の靴はどんなところへ連れて行ってくれるだろうか。

明日を楽しみに筆を置く。こんなに明日が待ち遠しいのはいつぶりだっけなぁ。

今日のモディファイ!

こんな感じで普段日記をつけています。今日のは特別長いですが。

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