もはやビスポークよもやま話
ビスポーク体験記!
更新サボって何やってんだろうと、ふと我に返りましたよ。
仮靴行ってきました!
仮靴と言えばあれですよ。
足の計測数値を反映した木型でいちど簡単に靴を作り、フィッティングを見た上で本縫いにあたってさらに木型のブラッシュアップを行う……つまり試作ですね。T1。モックアップ。ウッ……頭が……
靴においては憧れのイベントではないでしょうか。少なくとも、もでぃふぁいど はずっと憧れていました。
製造業において試作はトラブル必至の地獄イベントですよね。(遠い目で
フィッティング!
というわけで仮靴がこちら!!前回写真に困ったのでもらってきてしまいました。
聞けばKiyo Uda氏の場合、仮靴はバラしてシャンクなど再利用することもあるとのことでしたが、持って帰っても特に問題ないとのことでいただいてしまいました。(もしこれで持って帰る方が増えても問題ないとのことです)
仮靴!
このオーダーに対して、
この仮靴。
ハーフブローグです。
あくまでその日1度きりのフィッティングのために作っていただいているので、ソールはコルク。持って帰って超履いていますが。
「持って帰られるならもっと丁寧に作れば良かったですね…」というあたり、氏の人柄の良さが滲みますが、普通持って帰らんですからね。積み上げの処理など、履き心地に関係ない部分は最低限で当然なので悪しからず。
ゾンタVSワインハイマー!
さて、この仮靴は左足がゾンタ、右足がワインハイマーの革で作ってもらっています。これでどちらを本採用するか決めようという魂胆でしたが……ぱっと見あまり変わらんです。
後日家で履いたり、よく眺めたりしてわかったのは、
初期のツヤ:ゾンタ>ワインハイマー 柔らかさ:ゾンタ>ワインハイマー シワの細かさ:ゾンタ>ワインハイマー
という感じです。ゾンタはツヤがあって柔らかく、シワが細かく入るというのは、なんとなくイタリアのタンナー感あります。ええ革や。
ただしその代わり、シワは深く入ります。たぶんツリー入れても完全に元には戻りにくい。手持ちの靴でいうと、ガジアーノ&ガーリングが近い感じ。
一方ワインハイマーは、初期のツヤこそ若干控えめですが、クリームが入りやすく光りやすいとのこと。Rendoの吉見さんも同じことをおっしゃっていましたね。ツヤが控えめと言えど、並べてよくよく見て比べてようやくわかるくらいなので微差です。
シワの感じは英国靴等で見慣れた感じです。これもええ革や。
どちらが優れた革かと問われれば、最終的には好みでしょう。
もでぃふぁいど は今回完全に趣味の靴なので磨いて楽しみたいことと、今回は英国靴寄りにしたいと思い、ワインハイマーにしました。
ちなみに現在、黒のカーフであればデュプイ社のルビーカーフとシャトーブリアンも選ぶことができます。シャトーブリアンはフラテッリジャコメッティで使われていた記憶があります。なんでもすごい柔らかいそうで。黒カーフだけでも至れり尽くせりですね!!
仮靴フィッティング!
さて、仮靴のメインイベントはフィッティングです。
履いたところを氏が触ることでフィッティングを確認していきます。Kiyo Uda氏は仮靴は切らない派。「切ってもわかることは同じなので……」とのことで、だからこそ仮靴を持って帰れたわけであります。
本縫いに向けての木型の修正点は、
・左足の甲がまだ攻められそう ・カカト周りを更に攻める ・踏まずのフィットを向上
の3点です
肝心の履き心地!
さて、すでにサンプルシューズの時点でGaziano&Girlingと同等以上のフィット感でしたが、計測を元に作成した仮靴はどうか??
まず履いて思ったのは、
既製なら即決だった
ということ。更に言えば土踏まずのフィット感はサンクリスピンや、アーチフィッティングであわせたオールデンのモディファイドラストに近い感覚も。
ここから更に追い込むなんて?まだ良くなっちゃうの??怖。ビスポーク、怖。
もでぃふぁいど の足型について
こんなこと書いている参考になるのは70億人に1人くらいかと思うのですが、本人の備忘も兼ねているので一応。
Kiyo Uda氏いわく、もでぃふぁいど はとにかくカカトが細く小さいとのこと。それに対してボールジョイント周りの幅は普通のようです。
たしかに仮靴を他の靴と比べてみても、インソックのカカトがとんでもなく小さいです。例えばガジアーノ&ガーリングに仮靴のインソックを入れて比較します。
もっと極端にオールデンと。明らかに黒いインソックは小さいです。
そもそも単体で見ても土踏まず部分とカカトの太さが大して変わらんのです。たしかにこんな靴は今まで見たことないぜ……
で、これでいてカカトはまだ攻められると。たしかにフィッティング時、氏はこの隙間を気にしていました。
既製靴だったら仮靴の時点でカカトのつかみはパーフェクトレベルでしたがこれ以上!?という驚き。
ビスポークの奥深さ!
カカトを大きく見せる!?
既製靴だと「見てこの小ぶりなカカト!食いつき抜群!!」とかやるわけですが、ビスポークは違いました。
上で見たように、そんなもんじゃ済まないくらい、もでぃふぁいど のカカトは明らかに小さい。
客観的にどのくらいかと言えば、「そのまま作ったらレディースの靴と同等になってしまって靴が華奢になってしまう」レベルとのこと。仮靴にしても「かなり攻めたけどまだ大きいとは…」という感じのようで。
本縫いでは木型はさらに削る=カカトを小さくする一方、紳士靴としてカカトが小さく見えすぎないよう芯材を厚くする等の工夫を施すとのこと。
ただ足に合わせて作るわけではなく、氏の理想のトラディショナルなスタイルにあわせるよう工夫を施すというところにビスポークの真髄を見た気がします。
カカトとトゥのバランス
今回、当初はカジュアルめにセミスクエアトゥでお願いしていたのですが、いざ仮靴を見てみるとなんかトゥが大きく見えます。
……というのはカカトがとても小さいので、対比するとトゥがやたらデカく見えてしまうのですね。
ここにもビスポークならではのデザインの難しさを見た気がします。
ここに関しては、もでぃふぁいど のセンス云々よりもKiyo Uda氏の感覚でトゥを細くしてもらうことにしました。
最近のビスポークの傾向!
あとはKiyo Uda氏と話すなかで個人的に印象的たったことをいくつか。
キャップトゥ減り気味?
やっぱりキャップトゥなどのフォーマルな靴のオーダーは減っているかもしれないとのこと。
もでぃふぁいど も当時は2足目行くならクォーターブローグ(パンチドキャップ)!と息巻いていましたが、もはや全然スーツ着ないもんなぁ。
今2足目頼むなら外羽根とかブーツとか検討しそうな気もします。
まぁ気分屋なのでワクチン打って外出が自由になればあっという間にドレスシューズな気分に戻るかもしれません。笑
実は大事なライニング
さて、今回は甲を更に攻めるということでしたが、気になるのは、攻めすぎたら靴に噛まれないか?ということ。
しかし氏いわく、「既製品よりライニングがすごい柔らかいのでまず問題ない」とのことでした。絶対とは言えませんが…ともおっしゃっていましたが、今まで問題になってこなかったというのは何より心強いです。
たしかにライニングが柔らかくシワ部分が足に対して潰れるように変形してくれれば噛まれることはないでしょう。こういうところにビスポークと既製靴の差が出てくるんだなぁと改めて思いました。
ディテールのオーダー
良いか悪いかはともかく、最近は細部までデザインを決めてくるお客さんが多い、というお話。うん、もでぃふぁいど です。
ビスポークは職人さんとお客さんとで1足の靴を作り上げるもの。
完全に自分の理想の1足を作るのも良いですが、職人さんが「こうでなくちゃ!」と息巻いて作業に取り組めるような1足になれば、とも改めて思いました。1足を作り上げるプロセスも楽しそうだなと。
これ、どうですかねぇ?みたいな打診を通してそれを形にしていくのが真髄なのかもしれません。
会話のドッジボールではなく、キャッチボールをしようというお話です。笑
最近の人はかかとが細め
もでぃふぁいど は最近、
「なんだかんだ言うけど大抵の靴は普通にフィットするし、自分はさして特徴的な足ではない。ただの普通の足。超ノーマル」
と思って暮らしていただけに、今回判明したカカトの小ささはちょっと驚きでした。(その箇所の記事の分量でわかりますね)
が、最近こんな特徴の方が増えているとか。
お話をする中で、他の方の木型も見せていただいたのですが、明らかにカカトの大きさが違いました。笑
もでぃふぁいど は裸足で野山を走る未就学児だった過去もあるので、個人的にも原因は謎ですしKiyo Udaさんもそのあたりは謎らしいですが、何がしかの生活習慣の変化?畳が減ったから?その一方で海外の若い方からオーダーを受けても特にカカトが小さいと言うこともないようで。不思議!!!
そもそも、もでぃふぁいど が最近の人で良いのかどうか……
次回本縫い!
というわけで、仮靴編は以上です。
革を決め、フィッティングを改善し、デザインもいくつか相談の上変更しての本縫い。
年末〜年明けになりそうですが、楽しみです。
今日のモディファイ!
夏休みですね。皆さんどんな靴を買われますか?
そして届きました!