今日は特徴についてです。
Saint Crispin’sとは!?
話が長くなってしまったので3つに分けています。ブランドの詳細はVol.1をどうぞ。
Saint Crispin’sの靴の特徴!
ハンドメイド!!
サンクリスピンの靴は、職人さんの数も20人いるかいないかというルーマニアはトランシルヴァニアの小規模な工房で、ハンドメイドで作られています。
その生産数はビスポークを除けば月当たり80足。
手をかけているから生産数少ないぜ!アピールをしていたのはハインリッヒディンケラッカーもですが、あっちは年間8,000足……つまり月間666足ですからね。それでも「わずか年間8,000足」というふうに言われかたをしています。
サンクリスピンは、それとはケタの違う少なさです。1/8くらいでしょうか。
そんなのは生産体制が違うから当然なのですが、それにしても1日2足か3足という生産数でブランドを運営していけるのはすごいですね。本当に良いものを高く少数売る、というスタイルなんでしょう。
また、職人さんたちもここにきて皆就業歴がとても長いと言われ、その技術は今、円熟の極みに達したと言えるでしょう。言いたい。言いたかった。
肝心の靴自体はシームレスヒールに
絞られたウエスト。
木型(シルエット)やデザイン、その他ディテールもエレガントなのですが、どこか素朴でどっしりした東欧靴独特の質実剛健さも併せ持つ不思議な魅力を持つ靴です。
こうした温かみはVASSにも通じる東欧靴ならではのものかもしれません。
木釘!!
ウッドネイル、ウッドペグ、ペース、木釘……など呼ばれかたは様々ですが、サンクリスピン のレザーソールのウエスト部分は木釘で留められています。
木釘には鉄釘のような頭がついていませんが、接着剤とともに打ち込んだ後、水分を吸って膨張するために半端ない頑丈さになるそうで。そういやIKEAの家具の組み立てで使ったような……。あれは呼びかた違うか?
いずれにせよ木釘を打つ工程は機械化されていないので職人が1本1本打っていきます。普通は時間がかかるのでやらない方法です。ごく一部のビスポークシューズで見られる伝統的な底付方法となります。
そんな仕様あるの!?と初めて知ってから早数年、これまでまったく縁がありませんでしたが、ついにここまで来たか、という感じです。
ウエスト部分は木釘で留めているので、出し縫いの縫いしろが要りません。よってウエストを絞りたいだけ絞れます。
ウッドネイル製法は柔軟性と堅牢さがウリ……ということですが、踏まずは曲がる部分でもないし、堅牢さは縫ったのとどう違うのかは正直言って未知数です。
最近、ウエストの絞られ具合と履き心地は必ずしも一致しないのは重々感じていたのですが、この靴は果たして……?
クラストカーフ!!
クラストカーフはサンクリスピンの特色ある革のひとつです。
どのように特徴的かというと、これまた明快で、染色されていないヌメ革をサンクリスピン の工房で手染めしたものです。
黒でも茶色でも青でも紫でも、元は全てヌメ革。クラストカーフを使った靴はサンクリスピンの工房で熟練の職人さんにより染められて完成します。
もちろん普通の革だってもとは染色されていないわけでタンナーでなめした後に染色されるわけですが、その際は色落ちしないように染色後に仕上げ剤で仕上げられます。
クラストカーフはこの仕上げが控えめ、もしくはほぼされていません。
するとどうなるか。
色、落ちます。
どんどん抜けます。
その代わりクリームの色もガンガン入ります。
というわけで、普通の人には困った靴かもしれませんが、ある人たちにとっては磨くのが最高に楽しい靴になるわけです。
育てがいオバケ。
しかも手入れ後はかなりモチモチする革です。
たとえば、田中十靴店さんの別注のオックスフォードは紫をベースに黒く染められているため、履き込むと黒が抜けて紫っぽくなるでしょうか。
それをエイジングとして楽しむのも良し、自分でクリームを入れて奥深い色味を保つも良しです。めっちゃ欲しいです。
別注かけられる立場からなら、好きな色でお願いできるのかなぁ。
もでぃふぁいど の黒いクラストカーフは、陽が当たると少しヌメ革本来の地の色が透けて赤っぽく見える部分があります。
そういうのが見えるとき、1人ニンマリして不審な感じになります。
靴用の革じゃない、という評価もあるようでして、確かにシワは結構ガッツリ入るイメージです。しかしこれはプレメンテによって軽減が可能な線が見えてきています。
クリームエッセンシャルがキーぽいです。最近思いますが彼、万能すぎません?
また、靴用じゃないという評もありつつも、クラストカーフが使われている靴でも履き心地に関しては全く問題ありません。どころか……
シューツリー!!
この!!シューツリー!!!
その形状も芸術的なラスト専用ツリーです。
MTOしない限りはデフォルトでついていることが多いように思いますが、バラされて売っているケースもあります。
先に触れたように、この靴はウッドネイルが使われていてウエストの絞りがすごいため、既製のシューツリーが太刀打ちできない可能性は結構高いです。
サンクリスピンはシューツリーへのこだわりも凄まじく、木型ごとにシューツリーがあるのはもちろん、これ自社製です。
普通のブランドはシューツリーメーカーに製造を委託します。高級英国ブランドのシューツリーがなんとなく似た質感、仕上げだったり、パラブーツやウエストンのシューツリーがコルドヌリアングレーズにそっくりなのもそういうことです。(もちろん自社の靴に合わせた形で作ってもらうので純正ツリーを買う意味はあると思います)
でもサンクリスピンは自社製。木材を買いつけてくるところからやっているそうで。
そして何と言っても、このくりぬき具合。ミニ四駆の肉抜きどころの話ではありません。空洞です。Horrowedと公式で呼ばれています。
こんだけ空洞なら、シューツリー、履いてからすぐ入れる?でも湿気がこもっちゃう?いや、シューツリーが湿気を吸う?みたいな悩みは全て解決です。
すぐ突っ込めばOKだね!!
普通のラインではメイプル(楓)が使われ、MTOではCherry(桜)も選べる他、もう少し安いくり抜かれていない一般的なタイプも選べます。
そして鉛筆書き。笑
こういうところが、なんというか高級ブランドというだけでは済まない温かみなのかもしれません。
メダリオン!!
サンクリスピンといえばこのメダリオン。
曰くさくらんぼ。曰く火星人。皆さんはなにに見えるでしょうか?
MTOするとメダリオンの選択肢が軽く10を超えるレベルで豊富なのでマニア的には垂涎なのですが、既製ではこのメダリオンが選択されていることが多いようです。
というわけで、サンクリスピンの靴で特徴的かな?と思う部分をつらつらと挙げてみました。各所で滲む隠しきれない驚愕の履き心地こそが1番の特徴かもしれませんが……それはまた次回!!
この靴クッソカッコいいんですよね、、、、カジュアルでもいけそうですし。
今日のモディファイ!
残るは履き心地とサイズ感!!もでぃふぁいど の足はどーなっちゃうの!?!?
(更新しました!)