履き込むぞ〜(毎回言ってる
Foster & Sonとは!
1840年創業のイギリスのビスポークシューズメイカーです。ジョンロブ、ジョージクレバリーとともに英国ビスポーク御三家と言われます。(今考えました)
伝説の木型職人とも言われるテリー・ムーア氏が在籍していたブランドとして有名で、その靴は一見、既製靴のような佇まいながら履き心地はしっかりビスポークのそれ。気取らず履けるビスポークというのは個人的にも大変好みです。
ここ最近の既製靴のあれこれなんかはこちらの記事をご参照ください。
今回はそんな紆余曲折があった既製靴、しかも日本では展開されなかった?ミリタリーブーツについてレビューしていきます!
Foster & Son Cannock!
モデル名はCannock!
Cannockはイングランド中西部,スタッフォードシャー県南部の町です。(地名だとすれば。)
読み仮名はカノック。
靴のスタイルとしては、いわゆるエドワードグリーンのGalway……と言ってしまうとアレですが、外羽根で、イミテーションのキャップデザインのブーツです。スエードGalway、シブくていいな……。
このCannockをはじめ……というかこの靴はレアな選択肢で、あとはチーニーのペナインや、やはりグリーンのGalway、ヴェルトショーンはないですがVassのValwayなどがこのスタイルで有名でしょうか。(Valway、もう言っちゃってるじゃん!的なネーミングで好きです。笑)
このスタイルの起源は定かではない(エドワードグリーンが元祖なのか?)ですが、このCannockについてはFoster & Sonにアーカイブとして展示されていた大戦期のブーツを再現したものとのこと。
以下、デザインについて詳しく見ていきます。
ラスト178!!
フォスターの自社工場製の靴の木型と言えば、05や66など2ケタ品番のイメージですが、まさかの3ケタ。そして情報皆無。笑
唯一見つけた海外のレビューも「(たぶん)自社工場製、だって箱がそうだから……たぶん……」くらいのテンションでした。でも前回も書きましたがチーニー製でも良いの。しっかり作られているので。
木型の外観上の特徴はしっかり取られたトゥスプリングと、トゥ上部が平になっていること。チゼルトゥではないのですが、他の靴にあまりない特徴です。
ミリタリーブーツということで、全体的にボリューミーな木型です。靴下もドレスソックスというよりは厚めのソックスを想定……というか公式サイト内の製品詳細が消えた廃墟のようなページ(悲しい……)に「分厚目の靴下履くならサイズのハーフアップを忘れずに!(超訳)」と記載がありました。
どうやらSherwoodという短靴もあったみたいですね。見たことないですが
ちなみに上でも触れた海外のレビューによれば、履き心地はエドワードグリーンの72ラストに似ているとのこと。やはりGalwayなのか。ヴェルトショーンのGalwayは72ラストのイメージあります。
履き心地はミリタリーブーツの木型らしく、トゥボックス含めた足の前半分に余裕があり、シューレースを締めて足を固定するタイプ。カカトは標準的な大きさですが、シャフトがあるのでカカトが小さいもでぃふぁいど でも無問題です。
ブーツってカカトあげる時にスネでシャフトを押せるので、カカトはそんなに気にしなくても靴が抜けないのでフィッティングがラクですよね。
紳士靴の銘品って短靴が多いので、もでぃふぁいど は手持ちが短靴ばかりなのですが、同じよう方がいたらブーツもぜひ。シューホリックさんにもヤバめのやつあるので。
ヴェルトショーン製法!
なんたってこのブーツの特徴はヴェルトショーン製法です。詳しくは前々回のブログ記事をどうぞ。
Oak Zug?カントリーカーフ?
Skomaker Dagestad いわく、Oak Zug。フォスター公式曰く、カントリーカーフ。
zugはドイツ語、列車、行進、進軍などの意味があるようですが、イマイチこれだ!という意味は発見できず。ミリタリーブーツだから、ということ?
見た目はスコッチグレイン型押しカーフ。アノネイのハイランドのようにハリがある感じではなく、よりオイリーでモチモチとした質感なので、デュプイのハイランドでしょうか?(どっちも同じ名前の革があるのでややこしい)
ともかく、タフなレザーであることはビンビンに感じられます。トゥはこうやって釣り込みのテンションでシボが薄くなるのが大好物です。グレインレザー、好きすぎる。
また、上の写真のとおり、トゥはアンティーク風に色が濃くなっています。この自然な仕上がりはグッドです。どうせキズがつく……というか、既にこれを書いている時点で傘の先が刺さるなどの名誉のキズを負っているのですが、それを補色しがてら更に深まっていく色合い。エイジングの方向性がガイドとして示されているようでありがたいです。
シャフトは一部アンラインド!
ジョンロブのブーツもモデルによってそうだったかと思うのですが、くるぶしあたりはアンラインド仕様です。
一方で履き口は傷みやすいので表と同じカントリーカーフが当てられています。
これによってくるぶしあたりは足当たり超絶柔らかな極上仕様です。カントリーカーフの柔らかさ、モチモチ感を存分にくるぶしで味わえます。
Galwayはどうなんでしょう。お持ちの方、教えてください。
2023/5/2追記:Galwayもくるぶしアンラインド仕様とのこと。さすがEDWARD GREENに抜かりなし!zennoさま、情報提供ありがとうございました!
結果シャフトのシワ、たまんねえ!!
ちなみにサイズ表記はここ。なんか可愛いですよね。
袋ベロ仕様!
シュータンもカントリーカーフのアンラインド仕様なので超絶柔らか。さらに両端は縫い付けられている袋ベロ仕様です。
袋ベロは、チャーチのシャノンやチーニーのケンゴン、ウエストンのハントもそうですが、小石や雨水などが入ることを防ぐカントリーな仕様です。別名ベローズタン、ウォータータイトタンとも。
この辺りもあまり触れられないのでグリーンのGalwayも気になるところ。検索しても出てこないから袋ベロではない?
2023/5/2追記:EGのGalwayも袋ベロ仕様です。さすがBootMakerに抜かりなし!zennoさま、情報提供ありがとうございました!!
正直言って、もでぃふぁいど の履きかただと靴に小石が入って困ったケースってあまりなく、この仕様によってシャノンの耐水性が上がっている実感もあまりない(ポリッシュドバインダーの恩恵の方がでかい)のですが、強きは弱きを兼ねるというか、とりあえずこの仕様で損はない認識です。懸念点は、ハントの場合は甲がタイトになることくらいでしょうか。
イミテーションキャップ!
この類いのミリタリーブーツはなぜかみーんなイミテーションキャップ。キャップは革が重ねてあるのではなく、ステッチで表現されています。実質プレーントゥ。
こういう仕様で思い当たるのはフルブローグのブローグを省いてステッチだけで表現したAusterity Brogue。
Austerity は緊縮とか、質素などと訳されますが、このデザインも戦時にフルブローグとか作ってる場合じゃねえ!ということで生まれたデザインという説があると、松田笑子さんがフォスター在籍時にテリー・ムーア氏に聞いたことがあるとのこと。(下記コメント欄参照)
同じようにミリタリーブーツも「キャップとかわざわざ作ってる場合じゃねえ!革も節約だ!」ってんで、こんな仕様なのかなと推測します。
リッジウェイソール!
リッジウェイソールと言えば、ウエストンのラバーソールで有名なようで、アレはオリジナルのパターン(あくまでリッジウェイタイプ)なので、ハルボロラバー社の純リッジウェイは意外とレアな印象です。
個人的にはダイナイトより滑りにくいので好きなソールですが、ゴツくなるのは否めないのでその他のデザインとの相性次第でしょうか。このブーツには最高の選択だったと思います。(ミリタリーブーツならコマンドソールでは?という気もしますが)
フック&ごん太シューレース!
このタイプのブーツを選ぶにあたって個人的には必須だったレースフック。脱ぎ履きしやすさがダンゼン違います。(個人的感想です)
まぁ、チーニーで買ってハトメ→フックへのカスタマイズの方がトータルで安く上がるとか考えてはいけません。
あと単純に見た目が好きです。アクセントとして。
あとは特に意識していなかったのですが、届いてみたらシューレースがごん太でした。シューレースからコシを感じたのは人生初めてです。笑
普通のシューレースが普通のラーメンだとしたら、Cannockのシューレースは二郎的なワシワシ感、もしくは讃岐うどん的コシがあるものです。
濡れることが想定されている靴は、シューレースの結び目が濡れてしまうと解けなくなってしまう(海パンのアレ)ので、しばしば革紐が採用されますが、これは「こんだけごん太ならなんとか解けるじゃろ」的なやつでしょうか。
たしかに思いきり結んでも、シューレース自体のコシのせいで結び目がタイトになりません。
こんなシューレースに合わせて、ハトメやフックは大ぶりのものが採用されており、それがまたCannockのデザイン上のアクセントになっています。
Cannock(ラスト178)のサイズ感!
今後、フォスターのこのラストの靴を手にされる方がどんだけいるのか、という話ですが、一応書いておきます。笑
ラスト178はHPにも記載の通り、厚手の靴下での着用を想定するなら通常のUKサイズからハーフサイズ上げるのが良いでしょう。
厚手ってどのくらいよ?というと、目安としてユニクロの50色ソックスより分厚ければ厚手で良いのではないでしょうか。
もでぃふぁいど はブーツである以上ショートソックスでは履かないですし、わざわざドレスソックスで履く必要もないと思うので、普通〜厚手を想定してハーフサイズ上げました。
今のところ手持ちの靴下では、どれもいい感じにフィットしていて満足です。
というわけで、今回はゴリゴリのミリタリーブーツ、Foster & SonのCannockのレビューをお送りしました!
この手のブーツは履き込んでこそかと思いますので、ここぞという時のブーツとしてタフに履いていきたいと思います!
今日のモディファイ!
とりあえず履いておけば良い、というブーツがあると安心感が違いますね!
まさに幻ですね~レビューありがとうございます!たしかにカントリーコレクションなる靴、ウェブには上がっていた気がしますが店頭は見た記憶がないです(コロナでロックダウンもあったりしたので)。履きこみがいありそうですね。
kaisei_yaさま
いつもありがとうございます!!kaisei_yaさんでさえ現地で見たことない靴とは……。笑
一体どこで展開していたんでしょう、本当に。
kaisei_yaさんがkeble、OlivierやSandringhamを現地で買えた体験が羨ましいです!!こちらこそ記事を度々拝見させていただいています。良い靴でしたよね、Foster&Sonの既製靴。
こんにちは、hanaishiです。
素敵なブーツですね!
フォスター&サンのビスポークも既成も実物を見たことがないのですが、画像で見る限り雰囲気の良さが伝わってきます。革の質感、記事で触れていらっしゃるシャフトのシワ、大きめなラウンドトゥなどにより、ブーツのオーラがより強くなっているのかな、と思います。
私は雪国育ちのせいか、リッジウェイソールが好きで、外羽根のカントリー寄りの靴をMTOするときはリッジウェイを選択しています。
5Cなんていう小さなサイズで対応してくれるのはエドワードグリーンぐらいで、(5C木型を持つ数少ない)他メーカーではダイナイトソールのみの対応でした。EGのこういう対応の良さにも惚れたのかもしれません。
# そういえば、MTOしたドーバーは先日確認したところ、5月中旬ぐらいになるそうです。
# このドーバーだけは、シングルソールを選択していますが(笑)
Foster&Sonについて、Kiyo Udaさんからビスポークビスポークしていない、とのコメントがあったように思いますが、Foster&Sonのページでサンプルを見る限り、(サンプルだからかもしれませんが)既成靴に近くてとてもいいなぁ、と感じますね。
もでぃふぁいどさんが言うところの英国ビスポーク御三家の一つ、20年以上前にクレバリーでオーダーしたことがありますが、足にフィットしていても履き口が狭すぎて履きづらく、履かなくなりました。ちゃんとコミュニケーションできないとだめですね。
私の場合、一つの節目の60歳まであと数年ということもあり、ドーバーを最後にしようとしてますが、体調をしっかり管理して&お金もちゃんと管理して、Kiyo Udaさんのような良心的な価格のところに、お願いしてもいいかも、とちょっと思ってきました。
ちゃんと10km以上でも、坂道でもへっちゃら、という身体にしていかないとだめですね!(笑)
来月以降、治療のため二泊三日の入院を2回しなければならない私自身への戒めも込めて!
hanaishiさま
いつもありがとうございます!
既製らしいフォルムが特徴のフォスターの既製靴ということで、さらに変哲のない見た目のブーツなのですが、おっしゃる通り随所にこだわりが詰まっているのが気に入っています!
リッジウェイも良いですよね。ダイナイトより滑らないところと、粘り気のある履き心地が好きです。渾身のドーヴァーもいよいよですね。
そしてクレバリーでオーダーされたことがあるのですね!羨ましいです。私もコミニュケーションには全く自信がないので、履き口の広さに言及できる気がしません。
Kiyo Udaさんは価格改定入っているかもですが、細足の方向けのMTOライン(と言ってもデザイン、木型調整は自由なはず…)を始めていらっしゃるので、5Cの足でしたらイケるかもしれません。私もKiyo Udaさんご本人も足入れすらままならないサンプルで思わず笑ってしまいましたが、細足でハマる方にはハマるようで始めて間もないものの4足リピートした方がいるとおっしゃっていたような……。
そしてご認識の通り、私も靴を一生モノにするために身体をマシにしなくてはなりません。笑
お互い靴のために自愛していきましょう。同じ靴好きとして快復をお祈りしております!
もでぃふぁいどさん、ありがとうございます!
暖かいお言葉、本当に嬉しく思います。
靴は歩くための道具/手段のはずですが、靴好きが高じて好きな靴がいつまでも履けるように、歩ける身体を維持する/歩ける身体を取り戻そうとするのは、ちょっと可笑しな気もしますね(笑)
もでぃふぁいどさんも、毎年の健康診断結果と、毎日の体調の変化の違和感、どちらも大切になさってください。
すげーどうでも良い情報ですが、自衛隊が90年代くらいまで使っていたブーツ(自衛隊では半長靴という)は、焦げ茶のストレートチップでキャップ部分はちゃんと別の革になっていました。とは言っても豚革らしく、ゴリゴリのガチガチで履き慣らすまでは必ず靴ずれ起きるものでしたが。後継は黒のプレーントウになりました。(製造はミドリ安全がメイン)
ちなみに、自衛官は世間でハイシャインが流行るずーっと前から、門番(警衛勤務という)に就く時にはワックスは使わずにキウイの靴墨だけでハイシャインにしていましたw
とおりすがりのオッサンさま
コメント&貴重な情報をありがとうございます!こういった「ファッションではないホンモノの情報」は大変勉強になります。興味深く拝見させていただきました。
イミテーションのキャップはジーンズにおける大戦期モデルのように簡素化したディテールと思われますが、日本ではきちんと作り込まれているあたり、お国柄、そして何より幸い戦時下でないことが影響しているのかなと思いました。
傷がつきやすいつま先の保護という機能で考えれば、キャップがある方が間違いなく耐久性がありますもんね。
豚革というのも興味深いです。New Balanceなどに豚の裏革が使われているイメージがありますが、豚の表革はこの界隈ビスポークくらいでしか見ない素材です。
そして今は黒のプレーントゥなんですね。色の変遷も気になります。また、ミドリ安全の鉄板入りシューズは個人的にもお世話になっていたのでなんだか感慨深いです。笑
靴を光らせることについても、鬼の不文律がある、みたいな話はチラリと伺っていましたが、KIWIだったとは!
またぜひ色々勉強させてください。引き続きどうぞよろしくお願いいたします!