有言実行の男、それがわたしこと、もでぃふぁいど です。(前記事参照のこと)
いまさらドーヴァーをレビューする!
このドーヴァー、買ったのが2017年。気づけば8年経ちました。んでもって、こんなブログをやっているのにレビューを書いてない。
革靴ブログを7年以上やってて、ドーヴァーずっと持ってるのにちゃんと記事にしない奴、いるか??
というわけで、
書くか、
8年目の、
正直レビュー……!!
エドワードグリーンという靴メーカー
エドワードグリーンは、1890年にイギリスの靴の聖地、ノーサンプトンで創業した老舗靴メーカーです。

現在ではドレスシューズの印象が強いブランドですが、創業当初はブーツメーカーとしてスタートしています。なのでしばらくはブランド名のところにBOOT MAKERと入っていました。この時代のロゴもいいですよね。

シューツリーも古いものはBOOT MAKER……S!?深く考えるのはやめます。

エドワードグリーンが評価を高めていった背景には、他ブランドのOEM生産を数多く手がけていたという歴史があります。
ポールセンスコーンなど他ブランドの靴を裏で支えながら、製靴技術そのものの評価を積み重ねていったわけです。
また、1970年代には経営難も経験しており、デザイナーだったジョン・フルスティック氏が再建のために負債額+1ポンドで買い取った逸話も有名です。債権で再建とな。
氏はそこから、当時黒靴が主流だった英国靴においてイタリアの影響を受けたアンティーク調の茶靴を展開したり、履き心地を重視した木型を展開したりと、現在のエドワードグリーンの礎を築きました。
こうした歴史から、エドワードグリーンの靴には「ラグジュアリー」「洗練」というイメージよりも、
- 仕立ての正確さ
- 木型やバランスの美しさ
- 履き心地のよさ
といった、靴としての完成度そのものが強く表れています。
よく双璧として挙げられるジョンロブ(パリ)と比べると、ブランドの知名度も靴好き以外にはイマイチ。

それでも英国靴TOP2として挙げられるんですから、その実力たるや。靴のクオリティだけでここまでのし上がってきたんだから大したもんです。
(今はガジアーノガーリングも加えてtop3でしょうか?)
エドワードグリーンは時代とともにラインナップがドレス寄りへと洗練されていきました。それでも、その根底にあるのは、実用靴・ワークブーツを作っていたメーカーらしい堅実さ、硬派な職人気質な技術です。
エレガントでありながら、どこか「道具感」、「質実剛健な香り」が残っている。それが、エドワードグリーンというブランドの面白さだと思います。
ドーヴァーの外観
さて、そこにきてのドーヴァーです。エドワードグリーンを代表する靴と言えば、これかキャップトゥのチェルシー。
ドーヴァーは、エドワードグリーンがブーツメイカーだった歴史的な文脈を踏まえると、現代の洗練されたラインナップの中で実用的な側面を今に残すマスターピースと言えるでしょう。

外観、見ていきます!!
Uチップ考察
Uチップというデザインは、もともと狩猟や屋外活動を前提とした実用靴の文脈から生まれたものです。
フランスや北欧では、悪路や雨に耐えるためのノルウィージャン/ノルベジェーゼ製法と結びつき、より無骨な靴として発展していきました。

一方、エドワードグリーンはこの形をそのまま踏襲するのではなく、カントリーシューズとしての実用性を残しつつ、ドレス靴の木型に落とし込む方向で洗練させていきます。

J.M.WESTONのハントのコピーが「狩猟からパーティーにそのまま行ける靴」だったという話がありますが、ドーヴァーは逆で、言うなれば「パーティーからそのままカントリーサイドに行ける靴」という感じでしょうか。

そのバランス感覚こそが、英国靴らしいUチップ……本場風に言えば、エプロンフロントダービーなのだと思います。
スキンステッチ/ライトアングルステッチの機微!
ドーヴァーといえば、手縫いで限られた職人しかできないこの2つの技巧を組み合わせた、このY字がみなさん大好きなところです。もちろん もでぃふぁいど も大好き。

スキンステッチ/ライトアングルステッチは、微妙に糸の通しかたが違えど、その技術の核は、革の断面に糸を通し、縫い目が表に出ないように縫っていることです。
これがライトアングルステッチの断面イメージ。

こうすることによって、藪の中などでステッチを引っ掛けて切れてしまうのを防ぐ……というカントリーライクな実用的ディテールなのです。この8年、ドーヴァー履いて藪の中に入ったことはないですが!
また、このスキンステッチ、技術的に超絶難しいわけではない……なんて言われたりすることもあるようですが、仕事として毎日数時間、厚さ1mm程度の革を貫通させたらおじゃん、というプレッシャーの中、この工程を完遂する職人は限られて当然です。
1足ならまだしも、既製靴で分業してここの工程だけやり続けるのは相当しんどいはず。
エドワードグリーンでは、アンドリューピーチ氏が精魂込めて縫っているのが、イベントや雑誌でたびたび取り上げられていますね。大感謝。
えっ!?私のドーヴァーのスキンステッチ、モコモコしてなさすぎ………?というのは古今東西、靴好きを悩ませるタネですが、8年経つともう愛しいです。この出来、唯一無二。そりゃ当然、職人の手作業ですから!

これは革の柔らかさに大きく影響を受ける部分でして、たとえばスエードなんかだと、より凹凸が出にくかったりするので、こだわる方は素材も含めて要検討です。8年経てば愛せるので気にしなくてもいいかもしれません。
32ラスト:ドーヴァーラストのフォルム
たとえばガジアーノガーリングでは、イギリス中から探してようやく見つけた古い機械で丹念に革を木型に吊り込み〜という話は聞くのですが、グリーンってそのあたり意外と聞かないなと。
でもね、そんなのは良いんです。結果が大事です。8年経ってこのとおり、型崩れもなくフォルムを保っているんですから、その吊り込みたるや見事なもの。

32ラストは、いつから使われているかも定かではないという古いラストで、今ではほとんどドーヴァー専用になっています。そのため、そのまんまドーヴァーラストと呼ばれることも。

この32ラストは、いわゆるラウンドトゥの部類に入りますが、丸っ!という感じで過度に主張する丸さではありません。

ウエストは強く絞られてはおらず、トラディショナルな雰囲気。街で履けるバランスながら、カントリーシューズ由来の実用性を重視してまとめられていると感じます。

さらによく言われる特徴は、
- グリーンの中でも細身であること
- 小ぶりなヒールカップ
- 土踏まずのサポート感
あたりでしょうか。このあたりは履き心地のところで詳しくみましょう。

カントリーなディテールたち!
さて、フォルムはドレッシーでしたが、スキンステッチをはじめとして、カントリーシューズらしいディテールも随所に見られます。
たとえば、ダブルウェルトのヒール。これは、ドレスシューズには一般的に見られないディテールです。かかとの接地面積が増えることにより安定感が向上します。あとなにより、ゴツくてカッコいい……とはいっても本気のカントリーシューズに比べると控えめなバランスです。

あとはダブルウェルトだと構造的にカカトの方までコルクを入れられるのでクッション性が……という話もありますが、いつかオールソールするときに実際を聞いてみたいもんです。
そして、ハーフミッドソール(スペードソール)。ソールの前半分、接地する部分だけダブルソールという、それ。

このディテールって珍しいです。ドーヴァーが有名なので、このディテールも有名ですけど、採用している靴は少ない。
というのは、ゴツイ靴ならダブルソールにすれば良いし、ドレッシーな靴ならシングルソールにすればいい。
この前半分だけダブルってのは、ウエストの部分だけ細く見せたいっていう、ある意味で中途半端な仕様だからではないでしょうか?
昔はウエストだけシングルなので屈曲性が良い、とする説明もありましたが、ありゃウソです。踏まずにはシャンクが入っているので曲がりません。履いてみた感想もその通り。

となると、完全に見た目だけ、印象操作だ!というディテールなんですけど(笑)、ドーヴァーにはこれがないと始まらない。
というのは、ゴツイ狩猟靴をドレッシーな文脈に落とし込んだドーヴァーにあって、そのバランスを絶妙にとっているディテールがこのハーフミッドソール!!……と思うんですが、いかがでしょうか。陰なる立役者。靴の下の力持ち。文字通り。
ここがダブルだとカントリーに寄りすぎてゴツく、シングルだと華奢でドレッシーすぎる。その中間。バランサーとしてのディテールなのです。
外観まとめ:
スキンステッチ、ダブルウェルト、スペードソールといったカントリー由来のディテールが重なり、ドーヴァーは一見すると質実剛健な靴に見えます。

しかし細部を追っていくと、 32ラストのフォルムを始めとした、どこか過剰にならないバランス感覚が貫かれていることに気づきます。
無骨さを売りにするわけでも、ドレスに寄せすぎるわけでもない。
その絶妙なバランスこそが、ドーヴァーの外観的な魅力。ドレスシューズや、カントリーシューズともまた異なる惹かれ方をするのも、これが核なのかもしれません。
では、この見た目の靴を実際に履くとどう感じるのか。次は履き心地について触れていきます!!
8年履いた履き心地
ビスポーク級の履き心地!
このドーヴァーの履き心地は、
- グリーンらしい中底の心地よい凹凸
- 小ぶりなヒールカップによるカカトのパーフェクトなつかみ
- 優しく包みこむライニングの柔らかさ
- 派手さはないが、さりげなく支える踏まず部分
- キツくもなく緩くもないボールジョイント周り
といった具合で、これまで履いてきた100足以上の靴の中でも最上位に近いフィット感の1足です。

使い古された表現で恐縮ですが、もでぃふぁいど にとって、このユタカーフの 32ラストドーヴァーはビスポーク並みに、下手したらビスポークよりもフィットしている1足と言えます。

これは、ビスポークがショボいのではなくて、試行回数の暴力によるものです。一般に「履き心地、バツグン」と謳われているような靴を100足以上試してきて、そこから選んでるんだからそりゃ強いのは当たり前じゃろうて。
100足の中には足にぜんぜん合わない靴もありましたし、都度カップラーメン生活を送っていたわけですので、ここまで来るのにビスポークだけしていた方が確実に近道だったのは言うまでもありません。「ビスポークは3足目から」なんて言いますけど、既製靴だと同じ結論を得るのに100足かかったわけですので。
で、それを踏まえてですけど、このドーヴァーのフィット感は……
100点満点
です!!
これ以上のフィットはない、もでぃふぁいど にとってはそういう靴。
ユタカーフもライニングもフワフワ&モチモチで、包み込まれるような足入れ感。キツくもなく、ルーズでもないのに、靴下の厚みが変わろうとジャストフィット。1日履いても足が痛んだことがありません。カカト抜けもなく、羽根の開きも完璧。

他の靴にしても、よっぽどラスト載せ替えでグリーンでパターンオーダーした方が早いのでは?とも思いますが……事実、ダークオークのカドガンとか作ってみたいと思って早5年くらい……!!
靴底の返り:ハーフミッドソールVSユタカーフ
さて、今となってはハーフミッドソール?前半分ダブル?なにそれ?といった具合にグイグイ返るこちらのレザーソール。

履き込んで馴染んだのはもちろんですが、この履き馴染みは、アッパーレザーであるユタカーフの柔らかさも効いている気がします。

というのも、昔ブラックカーフのドーヴァーも所持していたのですが、そちらはカッチカチでした。もう硬かった……!!ぜんぜん馴染まず、カカトは削れ、しかも幅がDウィズだったのもあって小指のダメージがすごかった……という若気の至りでしたが、とにかく、靴底の返りにアッパーレザーは影響します。

という面からしても、ユタカーフ、オススメです!!
履き心地まとめ:8年履いて出した結論
グッドイヤーやハンドソーンなどのウェルテッド製法の靴は、履き込んで馴染んで履き心地が完成する……。このブログを読むような方には周知の事実ですが、これを最も感じさせてくれたのがこのドーヴァーでした。
スキンステッチやライトアングルステッチといった、見た目にキャッチーな部分はありますが、その真価は履き心地という1番ウソをつけないところにあるのかなと。
そうなると、多くのフォロワーが様々なブランドからラインナップされている中、敢えてドーヴァーを選択する意味が見出せます。
ドーヴァーはアッパーやソール(レザー/ラバー)のバリエーションが多く、それぞれで履き心地が大きく異なります。履き込み具合に加えて、これらの違いによってもまた違う感想が出てきそう。

ユタカーフなどの柔らかい素材+レザーソールの組み合わせは、めちゃめちゃ柔らかくなるので、優しい足入れ感が好きな方にオススメです!!!
ドーヴァー/32ラストのサイズ感メモ
さて、サイズについては簡潔にいきましょう。
32ラストは前評判通り、若干小さめのラストです。特にカカトや幅については、ハーフサイズくらい下に感じます。もでぃふぁいど は 32ラストでUK7.5のドーヴァーを履いていますが、UK7と言われても違和感ない感じ。
検討の際は、通常のUKサイズ+0.5を基準に試すのが良いでしょう。
そして、不安ならユタカーフなどの柔らかい素材のものを選んでおくと履き馴染みも良くって安心です。
まとめ:ドーヴァーは靴好きを逃さない
ここまで外観と履き心地を見てきましたが、ドーヴァーは決して派手な靴ではありません。スキンステッチなど靴好きにとってアイコニックな要素はあれど、大多数の人から見たときにその技巧の精緻さがパッとわかるわけでもないですし、もはや(新品は)コストパフォーマンスで選ばれる靴でもありません。

それでも8年履いた今、手元に残り続けている。
そしてレビューを書くにあたって改めて言葉にしてみると、「やっぱりすごい靴だな」と再認識させられます。
ドーヴァーは、見た目のデザインやブランドの格よりも、履いた結果の満足度で評価される靴なのだと思います。そこそこの年数履いてこう思えるのはステキなことです。
似たデザインの靴はたくさんあります。価格帯もさまざま。
それでも「長く付き合える一足」を探しているなら、一度は履いてみる価値のあるモデルと言えるでしょう。
少なくとも、靴沼にしっかり両足を突っ込んでしまった人間を、この靴はそう簡単には逃がしてはくれません。

今日のモディファイ!
わりと革靴にハマってから早々にセールで飛びついた1足だったのですが、それから100足以上履いてようやく出せた結論です。
革靴道に近道はない……!!
hanaishiです。新しいテーマ、いいですね。
Doverは、私の革靴の歴史で最初に購入した高級靴でした。スタイル名は Dover I となっており、Dover II やDover Ⅲとはどんなスタイルなんだろう、と思ったことを記憶しています。
いつも自分の話で恐縮ですが、このDoverは90年代中頃のマスターロイドで、30年以上履いてきたこともあり、クラックが長く深くなったため、昨年末引退させました。一回しかオールソールできず、それが残念なのですが、クラックがライトアングルステッチを横断する形で入ってしまっているので、チャールズパッチができるとしても Dover の良さが半減するため、桐のシューボックスで保管しています。
アッパーが靴の返りに強く影響するというお話、特に同感です。
Doverの話でなくて恐れ入りますが、スエードとボックスカーフの#180で比べると、履きならしを始めたカーフの#180は硬いラバーソールと相まって、踵が抜け気味です…。
話をDoverに戻すと、32ラストのユタカーフのDoverは最高ですね。
柔らかい質感でも不安を感じさせず、サイズさえちゃんと合っていれば、しっかり足を包み込む素晴らしい靴で、私の場合ダークブラウンのユタカーフを選択してMTOしましたが、本当に良かったと思います。
32ラストで思い出した経験談を一つ。
若い頃細身の32ラストが気に入って、32ラストのチェルシーを作ったことがありますが、私の中では正直合わないという感想です。それ以来、32ラストはやはりDover専用ラストだと思っています。
またまた長々失礼しました!
これからたくさん出てくるであろう様々な靴のお話、楽しみにしております。
hanaishiさま
いつも勉強になるコメント、ありがとうございます!!
DOVER Ⅰ !たしかにⅡや、Ⅲ、気になりすぎます。それにしてもマスターロイドがEG製だったころに巡り逢えていればと悔やまれます。。。売ってもらえるかはまた別問題ですが。笑
ライトアングルを横断する形のクラックは、このデザインの靴の宿命かもしれませんね。見るからに負担がかかっていそうですし、そもそも革断面を縫う時点で耐久性にも影響がありそうです。
以前、Brift Hさんかユニオンワークスさんで、クラック以外の部位に全てヤスリをかけてヌバックにしてしまう、という修理を見た記憶があり、最後はそれかなと思っています。
アッパーと返りの話はおっしゃるように、ローファーの方が重要になりそうですね。ラバーソール&カーフ、修行頑張ってください……!!実用性は間違いないですし、一軍入り待ったなしです!
そして、 32ラストへの載せ替えの話もありがとうございます!!
そもそも32ラストへ載せ替えのお話を聞いたことが全くなかったので大変興味深いです。
たしかにデザインによって同じ木型でも履き心地が違うというのは、オールデンで顕著でした。なるほど……キャップ系が合わないとなると、プレーントゥよりは……結局Doverになりそうです。やっぱりドーヴァーラストですね。笑
ちと2週間気合いを入れて書いて燃え尽き気味なので、ぼちぼちやっていこうと思います!引き続きよろしくお願いします〜!