ほんとうにこわいF.lli Giacomettiのおはなし
怖いものありますか?
皆さん怖いものはありますか?
ほうほう、なるほど??
靴を買ったあとの妻の視線、ボーナス払いの引き落とし日、気づいたら紙袋を提げていたあの日の失われし記憶。
なるほどなるほど。そいつはたしかに怖いかもしれないが、大の男がそんなものを怖がっていてはいけない。靴が好きなら堂々と買えばいいのだよ。
しかし…………しかし、実は靴にハマって数年経つがここに来て怖いものに出会ってしまった。
ここだけの話だが、もでぃふぁいど はF.lli Giacometti(フラテッリジャコメッティ)が怖いのだ。
F.lli Giacomettiとは?
F.lli Giacometti(フラテッリジャコメッティ)はイタリア北部ベネト州で1890年代に創業したメーカーの自社ブランドです。ちなみにベネト州の州都はヴェネツィア。
え?海?と思うのですが、このベネト州の北東部はドロミテ山脈に接しており、登山用ブーツが発展してきた土地でした。
同地で創業した多くの登山靴メーカーが製造工程の機械化や拠点の国外移転を行いスポーツブランドとして発展していく中、フラテッリジャコメッティはハンドメイドで紳士靴を作るという方向性で、現地では唯一残った紳士靴ブランドです。
その技術力は一級品で、某ハイブランドのOEM製造も請け負う……というか本来OEMがメインで、自社ブランドとしてジャコメッティ名義で出している、みたいな状況が正しいっぽいです。
たしかに、海外サイトで扱ってるのとんと見ません。探したこともなかったわけですが……
ちなみにフラテッリ=兄弟という意味なので、ブランド名は「ジャコメッティ兄弟」という意味です。文字通り、創業者の孫にあたる兄:ルイジーノ・ジャコメッティ氏(社長兼品質管理)と弟:ロベルト・ジャコメッティ氏(縫製担当)の2人が中心となってブランドを率いています。
フラテッリジャコメッティがこわい
ブランドの存在自体は知っていました。オールデンを扱う直江津の銘店、なとりやさんでも取り扱いがずっとあるので、オンラインでオールデンを眺める傍ら、こちらも眺めていたわけです。
当時から、馬革のグラデーション素材(トゥはコードバンでヒールはスエード状)とか、超絶カッコいいコロラート(グラデーション、パティーヌ)仕様の靴、普通のカーフの靴にしたって革の名前がシャトーブリアンとか、質に並々ならぬこだわりというか、何かものすごいポテンシャルを感じていました。
が、なぜ食指が動かなかったかって、試しに履ける場所がなく履き心地やサイズ感がわからないことと、「これ!」といった代表モデルがわかりづらかったからでしょうか。
価格帯も当時はウエストンやオールデンと同じくらいながら、素材が良さそう、くらいしかわからなかったのでなかなか購入するに至らなかったわけです。
それが2022年12月現在。多くの紳士靴ブランドが軒並み価格改定を行ったわけですが、
えっ……??ジャコメッティ君、まだそこ(の価格帯)にいたの……??という感じ。いや、マジで2016年くらいからずっとこの価格では???
今のクロケットのハンドグレードくらいの価格帯ですが、ここの靴、ハンドソーングッドイヤーなんですよ。
ウェルトを縫い付ける際に、返りの阻害要因となるリブテープを使わずに、手作業で中底に直接縫い付けていく製法です。
グッドイヤーウェルト製法では、機械でウェルトを縫いつけるのでリブテープが必須なのですが、ハンドソーンでは中底に溝を切って直接ウェルトを縫い付けます。
何が言いたいかって、リブテープがない分、返りが良く履き馴染みが良いということ、そしてそのために手をかけているということです。
にもかかわらず、価格帯はグッドイヤーの靴と変わらなかったり、昨今の情勢から言うとむしろ安かったりします。
なんでや!!
もちろん素材にも妥協なし。フラテッリジャコメッティは最近セレクトショップでもちょこちょこ見ますが、Bshopさんでカーフのローファーを見た際、「もうこれでいいじゃんね?」となりました。なんか革表面の透明感すごかったです。
そして履き心地も。(あまりに見た目が魅力的で、展示品がマイサイズだったので履かせてもらいました)
例えるなら、クロケットのラスト376をリラックスさせた感じでしょうか。ラスト376自体ローファーなのにツラくない、カカトと土踏まずがカッチリフィットする名作木型ですが、あれはジャコメッティと比べると、イギリスの靴ということもあってか、真面目にキッチリ合わせにくる感じ。
ジャコメッティのローファー用木型であるLuiginoはイタリアらしさなのか、「もうちょいくだけていこうぜ?」というリラックス感、気軽さを感じました。足に優しいです。馴染んだ後のウエストンの180のカカトのくいつきをアップさせたような。正直、もうこれで良いじゃん、という履き心地。
それでいてユルユルなのかというと、このヒールの絞りを見て!!!(あと透明感ある革の質感!)
菅原靴店さんにはジャコメッティ愛に溢れた記事がたくさんあるので是非ご覧になってみてください。
さて、ローファーの木型が良いという話をしてきましたが、それもそのはずというか、このローファーの木型、Luiginoは社長であるルイジーノ・ジャコメッティ氏の名を冠しているわけですからね。そりゃ自信があるのでしょう。
ローファー、ぜひ見かけたら履いてみてください。BeamsやEdificeにも展開あるみたいですので。
(店員さんには「みんなローファーはウエストンとかオールデン選ぶのでジャコメッティはなかなか……かなり靴好きですか?」と試着するだけで靴好き認定されるレベルですが……)
個人的に気になっている木型は英国風の木型であるVerdeラスト。Verdeはイタリア語で緑の意です。英国風で緑、つまりグリーン……気になりますよね??笑
総括すると、2022年12月現在、コストパフォーマンス1位はフラテッリジャコメッティであると思います。素材、履き心地に対する価格がぶっ壊れています。
だって見てください。このブーツ。
超希少な象革、しかもブーツなのに、この価格……!!!(しかも今ポイント1.7万円分くらいつくようで)
最近カーフの短靴でも普通にこの値段するじゃないですか。ウエストンとか。象革なんて希少な革のブーツがこの価格で手に入ることは、金輪際ないのでは????
フラテッリジャコメッティこわい!!!フラテッリジャコメッティこわいよ!!!!
こわいよ!!!!
今日のモディファイ!
せっかくブーツもあるし新年も迎えそうなので、ここらで新しい馬毛ブラシもこわいです。
ジャコメッティいいですよね。まさに隠れた名品で知る人ぞ知る的な立ち位置ですね。ジャコメッティと同じ工場で作られているマルモラーダブランドのトレッキングブーツもいいですよ。いろんな革で展開があり、こちらもゾウ革で作られたモデルがありますが、無骨なブーツのデザインと相まって只者じゃない感が半端ないです。ただあれをどのような服装に合わせるかはアイデアがなく…現実的で使いやすい選択としてはジャコメッティのカーフのジョッパーブーツかなと思っている自分がいます。でもジョッパー買うならウエストンか?という別の問題も浮上してきて堂々めぐりですね。
ぶんちゃんさま
コメントありがとうございます!!ジャコメッティきてます!!!
ええ、ええ、マルモラーダもカッコいいですよね。実はお迎え済……私のじゃないんですけどね。私も欲しかったです。
というような顛末もそのうち記事に上がるかと思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。
私もマルモラーダの象革チャッカ見たことがあります。けっこう特徴的な形をしていたので、あれはたしかに私も合わせには悩みそうです……
写真(楽天)のFG400はモンキーブーツですが、ジャコメッティの通常ラインのモンキーブーツよりドレッシーな木型(PIA-TR)でジーンズ〜チノ〜軍パンまで非常に合わせやすいです。シャフト見えなければ、ちょっとドレッシーなコンバース、くらいの感覚でなんでも合わせられると思っています。
ジョッパー、良いですよね……ウエストン722はあのクリースが超魅力的ですが、履き込むとどうしても薄くなっちゃうぽいので、コスパ的にはジャコメッティもじゅうぶんアリかと思っています。
さすがに作りはウエストンより雑な部分もありますが、そのぶんの価格差ということで……
こんにちは。以前、パラブーツランスの記事でコメントさせていただいたものです。お久しぶりです!
何年も前の記事にコメントを失礼いたします。
ジャコメッティの靴について調べていたら、またもや、もでぃふぁいど!さんに辿り着きました!
今夏でグルカサンダル(ユナイテッドアローズで購入した、ユナイテッドアローズと底に買いてあるイタリア製のもの)を履いているのですが、デザインがとても似てはいるのでがジャコメッティさんですごく理想的なものを見つけてしまいました。
今のも気に入っているのですが、サイズ的にも安全に同じのをもう一足買うか、ジャコメッティさんに手を出してしまうか、悩んでいます。楽しい悩みです。
しとみさま
お久しぶりのコメント、ありがとうございます!!
おっしゃる通り、楽しい悩みですね……!!
靴沼の住人としては、ぜひジャコメッティも試してみていただきたいところですが、そこそこ値も張るので流行りと関係なく履き続ける覚悟が必要そうですね。(サンダルなので、何も気にせず気軽な近所履きとして履き続けるのはやりやすいと思います!)
この時期ですし、万が一、セールにかかっているのであれば、文句なしにオススメです!笑