ド銘品のご紹介。
もでぃふぁいど のいまさら銘品考察
さて今週も始まりました、もでぃふぁいど のいまさら銘品考察!
企画の趣旨は下記をご覧いただくとして。
今回の靴は、J.M.WESTON 180 Signature Loaferです。

ローファーの基準点になってしまった靴
ローファーの元祖と、革靴としてのローファーの台頭
ローファーの元祖はご存知G.H.BASSのWeejunsですね。
じゃあ、なぜこんなにもJ.M.WESTONの180が有名なのか?あとから出てきておいてナニサマ?

BASSのWeejunsはそもそも、当時ヨーロッパでリゾートシューズとして流行っていたノルウィージャンシューズに着想を得た靴です。
映画スターの影響や、アイビールックの台頭によって一躍有名になったWeejunsは、上品な顔つきの「カジュアルシューズ」として世界に広まっていきました。
ディテールに着目すると、力強いステッチワークが、ビーフロール部分や甲のモカ縫いに見られるのも特徴。
また、製法はマッケイを採用しており、薄めのソールで軽快な履き心地。
こうした特徴から、ヨーロッパ的な革靴の重さ、伝統とは一線を画する、ファッショナブルなアイテムとしての地位を確立しました。
その「ローファー」という履き物を「ヨーロッパ的な革靴」の文脈に落とし込んだのが、J.M.WESTONの180と言えます。たくさん試作したっつー話ですもんね。

ビーフロールはなくなり、

モカ縫いもスッキリ。

上質なカーフレザーや、ソールの張り替え修理が可能なグッドイヤー製法の採用によって、長く愛用することが可能な靴へと生まれ変わったのです。
このあたりの意識の違いは、有名な「ドラッグストアギャング」の話からも読み取れます。
当時フランスの若者が、父親の180を勝手に裸足で履き、ドラッグストアにたむろすることで反抗心を表現していた……というあの話です。
これって前提として、
- 180が父=大人が履くちゃんとした履き物である
- ある程度手入れされて大事にされている
というのがないと成り立たないんです。
だって逆に、量販店で売ってる、父親のボロボロのスニーカーを裸足で履いて行ったって、なんの反抗にもなりません。
まとめると、Weejunsはローファーの元祖であり、学生本人の靴。180は父親の靴であり、ひいては社会で通用する靴。だから若者の憧れになり、崩すことが反抗になった。
そんな歴史的なあれやこれやを経て、われわれが革靴について語るとき、ローファーといえば自然と180が思い浮かぶ、そうした地位を築いてきたのです。
革靴としてのローファーの基準点
とはいえ、180シグネチャーローファーは革靴としては中々に異質な靴です。
特に、箱のように切り立ったサイドウォールやトゥ、

モカ縫いも上から見たときにサイドの直上までくる独特の位置。

とにかく甲とボールジョイントで押さえるフィッティング。

そして、サドル上のカモメの形をした切り欠き。

これらをそのまま踏襲するのか、もしくは変えるのか。
われわれがローファーについて語るとき、無意識のうちに、このローファーが比較対象になっています。(ウエストン180と比べて)フィッティングが楽、デザインがドレッシー……などなど。
その意味で、ローファーについて語るなら、1度は(中古でもなんでも良いので)履いてみる価値のあるマスターピースだと思うのですが、いかがでしょう。
革靴としてのローファーにおける、普遍的な魅力を全て持っている1足なのです。
ローファーに求めるもの、求めるべきでないもの
引き続き、ローファーにおける普遍的な魅力を探っていきましょう。
ローファーとは、(靴紐を結んだり緩めたりすることをサボる)怠け者、の意味です。
そしてここにこそ、ローファーに求めるもの、求めるべきでないものが見え隠れしています。むしろもっと早くに見出したかったッ……!
求めるべきもの:リラクシーな雰囲気
なにより、我々がローファーに求めるべきものはリラックス感でなかろうかと思うのです。
が、もちろん、もでぃふぁいど を始めとして修行に勤しんだことがある方からは「リラックス!?とんでもない体験をしたが!?!?」と声が上がることでしょう。

でも、この靴、レースアップシューズとは文脈を異にするカジュアルシューズなんです。
いくら端正な見た目で、スーツに合わせたって、(マニア以外からは)文句を言われることはまずないであろう見た目をしていても、カジュアルシューズなんです。
だって、怠け者の靴ですもの。

求めるべきでないもの:過度なフィット感への期待と修行
そんなわけで、本来ならそんなにフィット感を過度に求めず、なんなら靴べらがなくたってズボッと履けちまうくらいなフィッティングでも良いのでは?と思うのです。

ただ、BASSではそれで良かったのが、180の場合はここに革靴の文脈が入ってきます。
すなわち、長く愛用できるグッドイヤー製法を採用したために、革の伸びや中底の沈みこみによるサイズの変化を鑑みなくてはいけなくなりました。
要は、履き込んでいけば緩くなるのは必至なのに長年愛用されるという宿命を負ってしまった。
そして価格もいっぱしに高級革靴なワケですから、サイズ選びをミスるわけにはなおさらいきません。
せっかく奮発した革靴が緩くなって履けなくなるのは困る。ならば、耐えうる限り、サイズを小さくしてリスクを減らす。
ここに修行の発端があったのではないかと思うのです。

しかし、実際には修行中に心が折れたり、馴染んだと思ってもけっきょくキツイままだったり。
そうしてリラックスとはほど遠いフィッティングを強いられ続けた末に手放してしまったり、クローゼットの肥やしになったり。
そうした運命を辿ることも多いのが180です。
そんなことになるくらいなら、最初からジャストフィットでサイズを合わせ、馴染んだ後はちょい緩リラックスフィットくらいの着地を目指すほうが建設的だったのではと、2足目でサイズを上げた もでぃふぁいど は思うのです。

最近では直営店でも極端なサイズを薦めないという話も聞かれます。
いいじゃないですか、緩くなっても。怠け者の靴なんだから。

怠け者の靴へのアティチュード
そんなわけですから、180でなくても、ローファーに過度なフィット感を求めるのはやめにして、ぼちぼち近所を散歩したり、車移動メインの日に履いたりできれば良いのではないでしょうか。
畏まった日や、よく歩く日にはきちんとレースアップシューズを履く。
そうではない、なんでもない1日、ハレでもケでもない日常をリラックスして過ごすための1足として、少し緩めのローファーを用意しておく。
なんならつっかけるようにして、玄関に出しっぱなしだったそれに足を滑り込ませて、出かけていく。
怠け者という名を持つ靴に対する態度って、そのくらいでちょうど良いでしょう。
「ウエストンの革は良い」〜革質を思う
ガッツリ話が代わりまして、次は革質の話です。

これがまた、難しいテーマです。
革靴道に迷い込んだころは、1〜10のなにか一律の基準で、革質が良いとか悪いとか、評価できるもんだと思っていました。
ところがどっこい、そんな単純なものでもない、というのは諸賢ご承知のとおり。
わかりやすいところ、たとえば革表面の滑らかさで言えば、ジョンロブのブラックカーフなんかは間違いなく随一。いわゆるベビーカーフと言われるような革に見られる滑らかさです。

じゃあウエストンはどうなのかといえば、これはもっと表面がツブだっていて、決して滑らかというわけではありません。

なんなら、最近はアトリエ限定モデルとしてベビーカーフを使用した180が販売されていました。
つまり、普段の180のボックスカーフではなにが重視されているかって、滑らかさではないワケです。
ウエストンは、以前デュプイ社を傘下に収めていたので革が良い……その話もいまは昔、という感じになってきてそこまで聞かれなくなってきましたが、革が良いの根拠はそこですよね。
で、もう読めなくなってしまった記事なのですが、デュプイ社へのインタビューで、ウエストンが求めてくるのは、革表面のツブ立ち、”花”と称される特徴と語られていたのを覚えています。
つまり、表面が均一にツブだっていることによって、シワがわかりづらいものを……というような話だったかと。(うろ覚え
この話を読んだ時に、そうだよなぁ、革質というのは、一律の基準じゃなくって、たとえば
- 表面のなめらかさ
- シワの目立ちにくさ
- 耐水性
- 足なじみの良さ
- 分厚さ
というような複数パラメータで評価されるものであって、一概に良いとか悪いとか言えるもんじゃないよなぁと。
じゃあ、肝心のウエストンの革質はどうなのかといえば、このボックカーフは長年愛用できることを主眼に選ばれていると感じます。

物理的に、派手にシワが入ってクラックしやすいというような個体は見かけません。きちんとアッパーに適した部位が使われている印象。
また、精神的にも長年の愛用に耐えうる、上質なものだと感じるのです。ケアに応え、経年変化に耐えうる上質な素材。

……というと同じ価格帯の靴はだいたいそうなってしまうのですが、ウエストンはややタフさ寄り、という感じでしょうか。
めちゃめちゃきめ細かくて表面が滑らかなカーフでも、シワがガッツリ入るという例はあります。それと比べると、ウエストンは履き込んだ時に100点目指せる革という感じ。

そんなわけでウエストンに限らず、革質については、その靴にマッチするものが使われていれば良いと思います。適材適所。
個人的には、長く使用できる感じムンムンのこのタフなボックスカーフを好ましく思っています。
色付きのクリームでずっとケアしていましたが、たまにはステインリムーバーやって、無色のクリームでサラリと仕上げたら、なんだかとってもいい感じ。
なので「ウエストンの革質が良い」というのは、つまりその靴に相応しい革をチョイスするセンス、そして実際にそれを調達できるタンナーとのコネクションを持っている、というところに集約されるのではなかろうかと思うのです。
まとめ:1度は履こう180!!
というわけで、ローファーという靴を語るなら、一度はこの基準点を履き込んでみるのは良い経験になるはずです。
好きになるか、嫌いになるかはそのあとで良いというか。修行すると嫌いになるフェーズもありますけど、当然ながら良い靴ですよ。

あれ……?この企画、毎回けっきょくこうなる……??
ただ180は、ローファー良いなって革靴好きが思ったら、とりあえずベンチマークとして履いておけば間違いない1足だと思うんです。
ここから、アメリカンな雰囲気や楽さを求めるならオールデンに。
イギリスらしいカッチリ目で現代的なフィッティングを求めるならクロケットに。
……というようにオノレのローファー道を自在に歩むための礎になりましょう。もちろん最初の1足で殿堂入りを目指してもOKです。
しかしそれにしたって、180も直近の価格改定の繰り返しでけっこう値上がりしちゃいました。しかたないんですけど。
バーガンディなら2016年より安く買えちゃったりもしますがね!!
しかし諦めるのはまだ早い!!!中古ならお買い得!!!
ベンチマークとしてなら、ひとまず中古を試しに買って、じゅうぶん味わったら手放すというオプションもあります。そんな、極端に損することもないでしょう。
もちろん気に入ったら履き続けるもよし。むしろそうなれと思って書いていますが。
時期的にぴったりくれば、ウエストンヴィンテージなんかもオススメです。試着して買えますし。
amazonなんかでもサイズやウィズ次第では並行輸入品がお安く出てたりしますね。本国も価格改定されてるはずですし、為替もこんな感じですけど、どういうカラクリ?
そんなわけで、春です。180、1足いかがでしょうか?
今日のモディファイ!
たしか前に直営店で聞いたときは、黒がダンゼン人気という話だったと思うのですが、タンブラウン、良いですよ。

いやたしかに黒も欲しいけど!!!!!
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