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Alden563のおもひで〜もでぃふぁいどの靴棚番外編

よろしければ、おじさんの思い出話にお付き合いくださいな。

炭酸の刺激が心地よい。その後、フワリとマスカットのような爽やかな香りが広がる。そして喉を通る頃には、スッと消えていく余韻。

そうだ、この炭酸水をいつも飲んでいたっけ。ふと、あの夏を思い出す。

その頃、僕は長期の研修に参加していた。長期とはいえ、1ヶ月くらいだったか。

寮も併設されている郊外の研修施設で、地方から受講生が集まっていた。

僕が好きな炭酸水は困ったことにあまり売っておらず、寮の自販機に売っているのを見つけてここぞとばかりに毎日飲んでいた。

研修初日。

研修ということでサンダル以外ならなんでもオッケーだったのだが、僕は当時買ったばかりのAlden54321を履いてきたのだった。履かずにはいられなかったとも言う。

割と買った当初

全部で70名くらいの受講生がいたかと思う。

初日は暗黙の了解でスーツを着ておくという受講生も多かったので革靴は眺めたい放題だったけれど、特に目につく革靴を履いている人はいなかった。

でも、これが普通だ。

僕だけがこの靴の土踏まずの感触を人知れず味わっている。それを意識するだけで頬が緩む。世界が明るくなる。ハッピー。

何事もなく初日の研修を終えて寮へ戻る。そして自販機で例の炭酸を見つけて買い、自室で課題をこなしたり、靴を眺めたりして過ごした。

こんな感じで1ヶ月過ごすのだろうか、長い研修になりそうだ、と当時の日記には書いてある。

そして2日目。

その日からは受講生も皆ラフな格好で研修に出席していた。

そのとき、ふと目についたのだ。

あの色合い。

タッセルのボリューム。

そして特徴的な輝き。

どう見てもオールデンのタッセルローファーに見えた。

彼はラフな白いTシャツに細身のイカした色落ちのジーンズ、インビジブルソックスにタッセルローファーといういでたちだった。

もう研修なんてどうでもいい。

短髪で太めベッコウフレームメガネな爽やかイケメンな彼と是が非でもお近づきになりたい。

待ちに待った休み時間にそそくさと近づくと、

「あっそれ、オールデンですよね!?」

「昨日から気になってたんですよ、絶対そうだと思って」

見事に先手を打たれてしまった。

「あーVチップ、わかりやすいですもんね。そのローファーもオールデンですよね?」

と返せば、

「そうそう、何年か前に東京に来たときに買って……」

そう言う彼のタッセルローファーは、本当に良く履かれていたのだと思う。陽にきちんと当たることで赤みが強くなり、そしてしっかり手入れされて輝いていた。

それから僕らはすぐに意気投合し、休み時間になれば冷えた炭酸を飲みながらよく語り合った。

初夏の潤んだ空気を存分に吸った中庭の樹々の緑。

夏特有のもくもくと膨らんだ雲と青空のコントラスト。

空調で冷え込む研修室に差し込む陽光。

あの夏の景色の全てを、彼のタッセルローファーはしっとりと映していた。

その年はなかなか梅雨が明けず、僕はVチップが履けずに悶々としていた。

寮から研修室に行くためには、どうあっても中庭を通らねばならず、靴が雨に打たれてしまうのだ。

悶々としすぎてパラブーツのランスを寮に配送したりもした。例の1度目の過ちである。

そんなしとしとと雨が降り続く灰色の日にも、彼の足元にはタッセルローファーがあった。

「コードバンなのに雨でも履くのかい?」と聞くと、彼は

「好きだからたくさん履いちゃうんだよ」

と重く厚い梅雨空を吹き飛ばすように、ニカッと笑うのだった。

僕が梅雨を見越して持ってきていたレザーディフェンダーを貸すと彼は目を輝かせていた。

「こんなのオールデンから出てるんですね!!」

翌日もその翌日も雨だった。彼は早速使ってみたと言う。返してもらうときに聞くと、

「雨に濡れても色落ちが少なかった」とのこと。やはり雨の日でも気にせず履いていたことがカッコいいと思えたし、それでも彼のタッセルローファーはよく手入れされて、誇らしげに輝いていた。

今日、ふとあの日と同じ炭酸を飲んだときに、ブワァッとあの頃の情景が蘇った。

初めてのオールデンだったVチップをつい履いてしまうあの気持ち。そして、彼と足元で誇らしげに輝くローファー。

バタバタしているうちに連絡先も交換せず別れてしまったけれど、彼は元気にやっているだろうか。

タッセルローファーは今も彼の足元で光っているだろうか。

あれから僕もVチップを履き込んだ。陽に当てたのもあるけれど、赤みは彼のローファーにも負けないと思う。

再会することはないかもしれないけれど、靴にまつわる大事な思い出のひとつだ。

この週末は、Vチップを履いて出かけようと思う。

今日のモディファイ!!!

ちなみに炭酸はこれです。

エールビール、特にIPAが好きな人にはめっちゃオススメです。

2件のコメント

  1. 香水の香りとか音楽でセンチメンタルな記憶がフラッシュバックすることはありますが、飲み物でもあるとは…笑
    その方がこの記事を見て、突然の再会!となったら面白いですね!

    1. masa.eliasさま
      オッサンの思い出話にお付き合いいただきありがとうございます!!
      この炭酸水、ビールに使われるホップというハーブが使われているので香りが特徴的なのもあるかもしれません。

      いつか仕事抜きに再会して靴のことだけ喋りつつビールでも飲みたいな、という方が何人かいらっしゃるのでそういう方にご覧いただけてたら嬉しいです!

      それはそうと、563、ファーストオールデンにも最高だと思いますよ!!!

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