2020年6月、足柄SAにて

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フィクションですよ?

重くのしかかってくるような灰色の空。こんな日に運転していると、時間感覚があやふやになってくる。疲労感とガソリンの減りだけが、遠くまでやってきたことを示していた。

お気に入りのプレイリストもこれで2巡目だ。目的地も近い。そろそろ一息入れよう。登坂車線へ車線を変更し、そのまま続くサービスエリアへと滑り込む。

平日のサービスエリアの雰囲気が好きだ。レジャーの家族向けにピカピカ光るお土産屋や出店風の飲食店をよそに、行き交う作業着やワイシャツ姿の人々。僕も含めて、彼らがサービスエリアに求めているのはトイレとコーヒー、あとはタバコくらいだ。

提供されているサービスに比してドライなニーズ。そのギャップがどこか可笑しい。そしてその中に少しの共感があることに気がついた。

サービスエリアに共感とはなにごとか。

高校のころのことだ。わざわざ始めに弁解しなくてはならないくらい、僕は阿呆だった。

男女共学の学校に通っていれば、普通は3年のうちに浮いた話のひとつやふたつあるのかもしれない。もしかしたら両親も息子の青春にそんなことを期待していたかもしれない。

しかし、両親が息子の嬉し恥ずかしな報告を聞くことは、結果的にただの一度もなかった。重ねて言うが、僕は阿呆だったからだ。

世の中にありふれている話ではあるけれども、そのころの僕は、なんというかパンクを志していた。反体制である。

休み時間のたびトイレで逆だてた髪をワックスで補強するような輩にはなりたくないと、用を足すたびに思っていたのだ。

モテるための努力なんぞ虚しいものだ。己の内面を磨いていれば、滲み出る人格の高潔さに惹かれて自ずと声はかかろう。磨くべきは外ヅラではなく、内面だ。

そう信じてやまなかった。

とは言っても肝心の内面の磨きかたといえば、放課後に黙々と1人でギターを弾くくらいなものだった。本人としては世俗と袂を分かち、修行僧のような心持ちでやっていたにせよ、やっていたことは空気を震わせていただけと言っていい。

それでもいつの日か、1人ギターを爪弾くこの教室のドアを開けてくれるステキな異性が現れるに違いない。ややもすると、その異性はクラス中の憧れのあの子かもしれない。向こうから来るのであれば、それはまったくやぶさかでない。

しかし時が1年2年と経つにつれ、さすがに阿呆でも何かおかしいと思い始めた。

いくら内面を磨こうと、現れるはずの輝かしい何かの片鱗は見えず、ただ精神が擦り減っていくばかり。

イケイケなクラスメイトたちが浮ついた勢いのまま、あっちでフワフワ、こっちでフヨフヨくっついたり離れたりしている教室の片隅で、僕は計15kgのギターとハードケースを抱いたまま這いつくばっていた。

今すぐにこの重い木材を放り投げれば、まだ間に合うのかもしれない。しかしそんな度胸も勇気もないまま、時間だけが過ぎていった。文字通り浮かぶに浮かばれない状況だ。

当時、私は貝になりたい、という映画がやっていた気がするが、そんなに貝になりたくばギター1本で深海の如く静謐な教室に沈んでいるがよい。こちとら酸欠である。

異性とお付き合いするにあたって、ある程度の外ヅラが前提条件になっていることに気づいたのは、卒業アルバムに寄せられた「謎キャラ君」の文言を見てからだった。

なんの話をしたかったのか。

つまり、求められていないものを過剰に振る舞っても待っている運命は「謎キャラ君」だということだ。

この平日のサービスエリアも、ある意味で「謎キャラ君」仲間と言えよう。

そして、もうひとつ。

憧れは憧れのままにせず、最適な手段でアプローチすることがとても大事だ。

駐車場に出ると、高原に相応しくないムッとした湿気がまとわりつく。

そのイメージを振り払うように、アイスコーヒーを飲む。深く炒られた豆の香味が鼻に抜け、喉を滑り落ちていく冷たさが心地よい。

ふと遠くを見やると、ぶ厚い雲の隙間から陽光が差し込んだ。手にしたカップの氷がガラリと崩れ、結露がつたい落ちる。

大げさに言えば、運命の時は近いようだった。

エレキギターを電気的に見ると、アンプのスピーカーから複雑な内部回路、シールドケーブルや種々の機器、弦、弦に触れる演奏者自身まで含めて1つの回路になって音が出ている。

どこか1カ所でも配線が違えば音は鳴らない。

腕を振り下ろす。ピックが弦に触れ、弾けるように震えだす。振動は電圧の波となり、アンプの増幅回路を通ってスピーカーにたどり着く。スピーカーは電気信号を再び物理的な振動へと変換する。

パンとはじけるようにEのコードが鳴った。僕の耳にどこまでも速く届く。鮮やかに。明快に。まるで奇跡のように。

僕はこれまで正しい道を歩んでこられただろうか。この先に進んだとて、僕らしい音が鳴るだろうか。

ようやく重い腰を上げた僕を、彼女は待ってくれているだろうか。

深く息を吸い、鋭く吐き出して車のエンジンをかける。いざ、緑燃ゆる山の麓まで。

ちなみにエレキギターは演奏者自身がアースになっているので、配線のしかたによっては普通に感電します。

ライブハウスのマイクでビリビリしたのは、もでぃふぁいど だけじゃないはず。……ですよね?

今日のモディファイ!!

なぜこの人は平日に足柄SAにいるの?なんか近くに用があるの?唐突に出てきた彼女って誰??

謎が謎を呼ばず、次回へ続きません!!答えはサムネイルの通りです。ハイ。

6件のコメント

  1. え、で、どっちですのん!?笑笑

    買ったのか、買ってないのか 笑

    1. もりもりおさま
      拙文にお付き合いいただきありがとうございました!!

      紙袋を持っているサムネ写真のとおりの様相でございます………

  2. うおおおおお、ゲットできたんですか!!
    記事アップ楽しみですぅ〜

    1. まりまりこさま

      ありがとうございます!!履き慣らしだけは室内で進めていますので近々……!!

  3. あのトゥスチールとヒールスティールの室内履き慣らしはエグいっすね、、笑

    1. こりこりおさま
      おそらく歩くとフローリングは1発でアウトですね……
      もう完全に座ってるだけの人と化してます。笑

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