現時点での考えを本気出してまとめてみました。
結論!時と場合による!
それ言っちゃオシマイなヤツでは……
いや、結局こういうことだからイマイチ定まらんのだと思うのですよ。
ただ、革質というのはいくつか視点があると思いますので、それぞれ見ていきますよ。
キメの細かさ!!
≒一般的な革質?
これが一般的に言われる革質なのではないかと思います。
キメが細かい革のテクスチャを見てみるとこんな感じ。大してクリームもワックスも塗ってないのに光っちゃう。
キメが荒い革はこんな感じ。まぁ生き物の革なのでこれくらい不均一な方が自然っちゃ自然です。
キメが細かい革といえば、仔牛の革(カーフ)です。自分の子ども見ていてもそうですが、ヤツらの肌はとんでもない肌理の細かさですよね。牛も同じです。たぶん。
既製靴とカーフ
ただ、カーフは仔牛なのでそもそも採れる革の面積が小さいです。
その小さな仔牛の革を、表面にシワや傷、血管の跡がない均一な部分だけ使うというのは大変贅沢なことなのです。動く部分にはシワがよりますから、使える部分は限られます。
エイヤ!と1足作るだけならなんとかなるでしょう。一般的にはビスポークの方が良い革を使えるというのはそういうことです。とびきりの素材の良い部分を使って作れば良い。少しあれば良いんですね。
一方で、たくさん生産される既製靴では高品質のカーフが大量に必要になります。個体差が大きすぎるとブランド価値を損ねるからです。せっかくエドワードグリーンやジョンロブを買ったのにハズレの革じゃ困りますよね。 (それでも個体差は年代やモノによってあると思います)
そういうわけで、高級靴メーカーは革の調達先を探すのに奔走することになりますが、大量に高品質な革を生産する大規模なタンナーには限りがあります。そうすると、必然的にデュ・プイ社とか、アノネイ社、ワインハイムレイダー社……なんだか聴き慣れタンナーの革になるのもむべなるかな。
いちいち小規模なタンナー群(イタリアにはたくさんある)から新しい調達先を探してたらやってらんないですからね。(グリーンはたまに調達先タンナーを変えているということも聞きます)
というわけで、一般的にカーフレザーは高級皮革であり素材も高価、そして大量に安定したものを調達するのも大変なため、カーフを使った靴も必然的に高くなります。
また、キメの細かさで言えば、古い靴の方がキメが細かい革が多い気がします。最近の革は悪くなったねー、みたいな話も聞きますが、たしかにキメ細かい革は少なくなったかもしれません。気候変動だ需要変動だ、みたいな話もありますが、もでぃふぁいど は真実は知りません。個人的には仕上げの差(環境規制で使えなくなった薬剤等)か?という気もします。
たしかに違いはありますが、良し悪しじゃないというか。
キメの細かさは作れる!!
そして実は、キメの細かさは作れます。笑
ガラスやメノウのローラーで思いっきり圧をかけつつ猛烈に擦るグレージングという作業によって表面を均すことができるのです。
カーフでもグレージング工程が入っているものもありますし、キップレザー(カーフより成長した牛の革)でもグレージングキップって良くあります。
キップの方が革の面積も大きいので、コレをキメ細かい革にできればそれに越したことはないだろうと。人類の叡智の結晶です。
グレージングされたカーフとか、もう質の良し悪しわからんと思うのですよ。
というわけで、キメの細かさだけ見ても革質は語れないかなぁ、と最近思っています。
しなやかさ!!
しなやかさと厚みと
次はしなやかさです。
しなやかじゃなきゃ、靴としての履き心地に期待ができませんよね。靴に使われる革にはできるだけしなやかであって欲しい。
もちろん革が薄ければ柔らかくなります。だからと言って薄すぎると今度は耐久性が下がります。
つまり、厚みがありつつもしなやかに曲がり、きちんと戻る(可塑性が高い)革が、優れた革と言えるのではないでしょうか。
シワの入りかたでわかる?
が、コレって新品を見てもわからない部分ですよね。履き込まれた靴のシワの部分がある程度これを反映しているかもしれません。シワが細かく入るかどうか、ということです。
そしてこのしなやかさは革の手入れ次第でも変わってきます。クリームをたくさん入れればしなやかになりますが、やりすぎるとベタついたり型崩れしたりするのが早くなる、なんてこともありますのでやりすぎ注意です。
小括
革の質と言えば、もっと一般的にはキズやシワが入っていないというのもありますが、高級革靴界隈で言われる革質うんぬんは、すでにこのハードルを超えた後のお話です。
というわけで、ここで言われる革質というのは
- キメの細かさ
- しなやかさ
この2つの要素で成り立っているのではないかと。
たしかにこの2つの視点で見ればジョンロブの革質は抜群と言えるでしょうし、エドワードグリーン≒J.M.WESTONな感じのような気がします。
もでぃふぁいど が「ウエストン 革質」とかで検索しまくってたころのネット上の評価と一致しますね。
ここからは、革質と一般的に言われることはないでしょうけど、革の良し悪しに関わると個人的に思う要素です。
まだまだある革の良し悪し!
タフさ!!
これも個人的には重要な気がします。
キメが細かく、しなやかだけど、すぐ破れる革だったら悲しいですよね。とっておきのハレの日にしか履かないような靴にはアリかもしれませんが、実用には向かないでしょう。(なので、ビスポークでは検討の余地があると思います)
というわけで、良い革の条件としてタフさは外せません。個人的に。ケチだから。
特に既製靴のブランドは「履いたらすぐ破れた(クラックが入った)」なんてのは致命的なクレームなのである程度タフな革を使うでしょう。
前述のようにあんまり革質、という言葉では語られないですけど。
まぁ何ってオールデンやワークブーツに使われるクロムエクセルレザーなんてカーフでもない(ステアハイドなので)し、シワもおおざっぱに入りますが、革質悪いとかそういう観点ではあまり語られませんよね。
でも個人的には良い革だと思います。良い革と言うか、もはや好きな革。たとえカーフより素材原価が安くても構いません。笑
仕上げの度合い!
キメの細かさに関連しますが、革に施された仕上げ(コーティング)度合いによっても見た目は大きく変わってきます。
多かれ少なかれ、革には表面を保護するために仕上げ剤が塗布されています。
めちゃくちゃ極端な例ではポリッシュドバインダーやガラスレザー。仕上げ剤というか、樹脂塗っちゃってる。
でも、うわぁ、おたくのシャノン、革質悪いですね、みたいな話はとんと聞きません。もはやここまでくると判断不能、どうでも良い領域かもしれません。笑
逆に、仕上げが控えめなレザーが使われていると思うのはガジアーノ&ガーリング。
それゆえ、けっこう深めのシワも入ります。
が、おたくのガジアーノ、革質悪いっすね!!みたいな話は聞きません。聞かせないで。
ガジアーノ&ガーリングは馴染みやすさや柔らかい履き心地を追求しているブランドなので、こういうチョイスなのかなと。
希少さ!!
これも革質でないですが、良い革と言えばエキゾチックレザー!!みたいな向きもあるかもしれません。実際希少なので高いです。
質というか、良い革。
コードバンも質が色々言われますがあまり質が良いとか悪いとか正直わからんです。キズがないとか、色が均一とか、最低限のラインはありますけど。笑
厚みがあるものもあれば、薄いものもある。厚みは漉いて薄くしている場合もあるので製品を見てもアンラインドでスタンプでもない限りわからんですね。
と、思いましたがおまえは結構ボコボコだな……
表面も凸凹なものから均一で光りやすいものまでありますが、長年ブラッシングしていれば毛が寝てくるので一般にツヤは上がります。
光らせたければワックス塗れば光っちゃうし……
個人的に「うわ、このコードバン良い革質!!」とはあまりならないです。分厚くてモチモチ、好き〜ということはありますが。好き。
モチモチ?
さて、モチモチ。良い革はモチモチしている。
というか、状態が良い革はモチモチしている。
ものすごくキメ細かい革でも油分や水分が抜けてパリッパリになっちゃったビンテージの靴とかありますからね。
状態が良いかどうかも、大事な観点だと思います。ただ、それが革質かどうかは微妙です。世界の何処かには、パリパリのジョンロブとかもあるでしょうし。ロブパリパリ
まとめ!!
(あくまで個人的にですが)革の良さとは、
キメの細かさ×しなやかさ×タフさ
だと思います。このバランス。
始めに書いたように、用途によってこの最適解が変わると思います。全てにおいて、ジョンロブが1番とは思いません。
雨の中、タフに履くのであればクロムエクセルやポリッシュドバインダーの方が最適です。
日常的に履くなら、キメの細かさよりタフさが必要になることもあるでしょう。
逆に、とっておきのハレの日に履くなら、タフさは要らないからとにかくキメが細かく、光りやすいもの。(パテントという選択肢もありますが
磨き甲斐を求めるなら、仕上げ度合いが控えめな革の方が楽しいかもしれません。
逆にすぐ光って欲しい靴もあると思います。フォーマルな靴を買ったのに、磨くのが難しくなかなか光らないようでは困るかもしれません。
よく取り沙汰されるクロケット&ジョーンズのアニリンカーフの革質についても、誤解ではないかと。
個人的には、ハンドグレードはきめ細かく、仕上げ度合いが控えめ=磨き甲斐があって、しなやかな革だと思います。タフさについては、履き込んだことがないので言及は避けますが、昔一緒に回った営業マンの何年も履いたオードリーはキレイに足元で輝いてましたよ。
仕上げが控えめなアニリンカーフなのでガジアーノ&ガーリングに似た革のチョイスだと思います。
こういう革ってクロケットの価格帯では意外と使われないので、他より深く入るシワや、ワックスで光沢が得にくいナチュラルなテクスチャが誤解されたのかもしれません。
何が言いたいかって最初に書いたように、
好みの革を見つけましょう
ということです。この考察が皆さまが良い革(靴)との出会われるための一助になれば幸いです!
今日のモディファイ!
でも”良い革質”って魅力的な単語ですよね。
ありがとうございました!(^^)
流石もでぃふぁいどさんですね、期待以上のまとめ具合です。
お見事です!
こちらを読んで最近購入した3都市チャーチは肌理は荒いな、と言うことがわかりましたw
いやー、頭の中スッキリです
ちなみにウエストンのカーフは結構グレージング?されてらるんですかね??
顔料とは違う均一さを感じるんですよね、あちらの革は…
パリパリピさま
ありがとうございます。
ウエストンのデュプイのボックスカーフですかね。
結構顔料?仕上げ?が施されている革だと思います。い
『ミウラな日々』さんにも最近クロケットとの比較記事が上がっていましたので、非常に参考になるかと思いますので是非!
横から失礼します。
ウエストンのボックスカーフはグレージング仕上げされてますよ。
lastにデュプイが出た記事では、ウエストンはカゼインのみを使ったグレージング仕上げと書いてありました。
染めは毛穴もみえるのでたぶん顔料と染料を使ったセミアニリンのような気がします。
ウエストンの革は昔から皺表面が割れやすいとも聞きますしグレージングが影響してるんですかね?
コードバンみたいにつるつるですし、他のボックスカーフよりかなり強力にグレージングしてるんですかね??
いずれにしろ中古品でよくクラック入ってるのを目にするので、自分は履きじわやアウトラインの皺は特に念入りにクリーム塗ってます。
お二人ともありがとうございます
ウエストンの革、そうですよね、明らかに圧をかけられて綺麗にしてる感を感じる革なんですよね…
ロブの方が自然な革っぽさを感じます
それが影響しているかはわかりませんが、たしかによくクラックな靴見ますね
90年代くらいの革ならまた違う気もしますが
(昔はフッ素加工?かなんかで撥水処理した革だったりしたらしいので、今のプロダクト的な均一さのあるカーフとはまた全く違う感じですよね
ピリピリパさま、通りすがりのチワワさま
お二人ともありがとうございます!
ガッツリグレージングされてるんですね。笑
私もシワ周辺へのケアは怠らないようにしようと思います……!!
グレージングなのか、顔料の配分なのか
「ロブの方が自然な革っぽさを感じます」
というのはほんと同感です。
完全に憶測ですがロブ通常ラインのブラックカーフがデュプイなのかなと思っています。
毛穴が粒立ってしっかり見えていて、ウエストンのボックスカーフより柔らかい気がします。
ロブはライニング(黄色)も昔のウエストンのように飴色に変化しますし、何よりふかふかしてすごく柔らかいですよね。
最近のロブは見た目という点では、傷やトラがあるものがとても多いので均一に見える加工をされたウエストンの方が綺麗に見えますが。足あたりの良さや耐久性ではロブに軍配が上がる気がします。
オックスフォードカーフだと話は変わってきますが。
でもどちらもいい靴ですよね。
ハントダービーなんて唯一無二ですし一番好きな靴です。
好きだけど合わないと思っていたハントがハーフサイズ上げて再購入してみたら、これが足にピッタリで…夢のようなんですが…もう何足か欲しい欲求が…あと最低でも2〜3足は揃えておきたい…でも…高すぎる…。
自分もある程度は革の耐久性=厚さだと思っています!
そこで質問ですが、ガジアーノの革はロブやグリーンと比べて薄いですか?
ガジアーノはラスト、底付けなどとても素晴らしいのですが、革の耐久性だけが不安です。
まっつんさま
コメントありがとうございます!
ガジアーノの革はロブやグリーンより格段に柔らかいです。薄さは極薄ということはなく、ロブのミュージアムカーフとどっこいどっこいかなと。(個体差もあると思いますが)
これだけ柔らかいと、よっぽど濡らす→乾燥を繰り返してパリパリにならない限りはクラックは出ないような気もします。
シワは大きく入りますが、しなやかに曲がるので割れないイメージです。
割れない保証はないのですが、ご参考になれば幸いです!