今日は真面目にレビューしていきます!
リベンジ8695ラスト!
……の模様はこちらから。
そんな中、縁あって足元に収まったJohn LobbのRusselを今日は見ていきます。
John Lobb Russel!
パンチドキャップダービー!
どことなくまだ他人行儀なRussel。ダブルレザーソールのシボ革パンチドキャップダービーです。ジョンロブの中でもカントリーテイストむんむんのカジュアルなモデルになっています。

結局のところ人の感覚によるので正解はないと断った上でですが、もでぃふぁいど としてはカジュアル〜ドレスまでの守備範囲をキッチリこなせるのはパンチドキャップダービーやダブルモンクという結論が出つつあります。(さすがに冠婚葬祭にはキャップトゥを履きますが)
そういうカジュアル〜ドレス兼用の靴は、ドレスといってもジャケパンくらいの格好に合う靴が多いのですが、Russelはスーツでもイケそうな気がします。装飾控えめなパンチドキャップですし。それにジョンロブやぞ。スーツに合わせて何が悪い!!

これがパンチドキャップで内羽根だとカジュアルに合わせづらいのですが、外羽根(ダービー)ですし、ショートノーズでエレガントすぎない見た目かつ、ダブルソールでボリュームもあるので休日も履けます。履けますというか、履きます。

ブローグ詳細!
ブローグは言わずもがな丁寧です。パンチの打ち漏らしがないのは当然、親子穴の間隔もバッチリ、前後のヨレもありません。

穴がサイドに向かって伸びるように歪んでいるようにも見えますが、これは革が伸びるくらいのテンションで力強く釣り込まれていることの証左……のはず。笑
少なくとも20年くらい前に作られた靴ですが、革がパンとしっかり張っていて、型崩れもありません。あまり履かれていなそうなので、元々そんなもんかもしれませんけれど。
バッファローカーフ!
ジョンロブのグレインレザーと言えば!のバッファローカーフ。たぶん型押し(揉み革でない)グレインレザー。

シワなど分厚くモチっとした質感でありながら、型押しレザー特有の表面のハリがあります。また、釣り込まれてテンションがかかる部分はシボが薄くなっているのがたまりません!!
シボ革なのにもかかわらず、クリームだけでここまで光るのはさすがジョンロブ、もしくは古い靴だな、という気がします。最初の方の写真とか、スムースレザーですと言われたら信じるかも。
下は古めのウエストンのグレインレザーですが、バッファローレザーとは違うっぽいですね。シボが荒くワイルドです。

バッファローレザーはシボ革のなかでもシボが浅く、山と谷の色のコントラストが強くないので上品です。少し離れたらスムースレザーと見間違います。

しかし、こういう古い靴の革はクリームだけでやたら光るのは経年によるものなのか、本当に現在より革の質が良いのか……?
ジョンロブの年代判別
このラッセルはおそらく90年代後半〜00年代初期のジョンロブです。
ジョンロブの既製靴で最も古いのはJohn Lobb Paris表記のもの。
そもそもロブパリは、エルメスが英国ロンドンのビスポークシューメイカーJohn Lobbの既製靴、および英国以外でのビスポークサービスにおける名称使用権を買い取ったモノです。(逆にいうと、ロブロンドンに残っているのは基本的に英国でのビスポークサービスのみ)
なので初期はジョンロブ(パリの方)みたいな感じで、靴からシューツリーから箱までみーんな”Paris”と添えられていたのでした。
それが90年代半ばには、軌道に乗ってきたこともあってか「ワシがジョンロブじゃい!」ということでParis表記が消えます。(名称使用権ってそういうことなので、堂々と名乗るのは別に当然なのですが、当初は遠慮してたんでしょうか?)
というわけで、この靴はそのParis表記が消えた時代のモノです。たぶん。
インソール、

シューツリー、

箱に至るまで

みんなParis表記がなくなった時代のものです。ただ、個人的にはなんとなく、このロゴだと3行目に小さくParisとあったほうがバランス良い気がします。笑
その後、00年代にはブランディングを刷新し、目を引く黄色い箱、よりエレガントな新ラスト(7000ラスト等)、特徴的なJLヒールの採用など、ロブロンドンとは完全に独立した路線になりました。
良く言えば職人的で質実剛健、悪く言えばイモっぽいイメージだったのを刷新したわけです。
その後、箱がえんじ色になったり、

JLヒールがなくなったのが2010年代前半。ブランドイメージはさらにエレガントな方向に進化しました。ここにきてロゴもお馴染みのコレに。

ちなみに以前はコレ。

日本でジョンロブと言えば、ロブパリのシティやフィリップが有名でエレガントなブランドというイメージが強いです。
インスタもこんな感じ。(若干恣意的な比較ですが…笑
こっちがロブパリ。
一方、ロブロンドンのハウススタイルって実は下のようにショートノーズでポッテリな感じです。どっちかと言えばロイドフットウェアさんで取り扱いありそうな感じ。
途中からロブパリがエレガント路線になったので、話がややこしくなったということで概ね良いと思います。
両者犬猿の仲というウワサは聞きますが……たしかにインスタアカウント名もロブパリが”johnlobb”、ロブロンドンが”johnlobb1849″……。ぱっと見どちらが本家なのか?こりゃ一悶着の香りがするぜ……。
本家の影響色濃い8695ラストの外観!
上記の経緯もあり、ロブパリとして既製靴をスタートした当初に開発された8695ラストはロブロンドンの影響が色濃く出ています。というか、そのハウススタイルを模した既製靴なので当然です。
なんといっても見た目はショートノーズで丸っこいです。クラシックです。

上のロブロンドンの写真を見てからだと納得というか、アレを既製靴のラストに落とし込んだんだな、というのがわかりやすいかと思います。
8695ラストについてはこんな感じの木型なのですが、ジョンロブは時代に合わせて同名のままラストを改良していくので、最近の8695ラストの靴はこのラッセルよりスマートでエレガントになっている気がします。
8695ラストの履き心地!
8695ラストは見た目こそ普通なものの、これがまた意欲的な履き心です。正面から見ると、ねじれもそんなにありません。

現代的なラスト代表のアンソニークレバリーと比べると差は歴然。

しかし8695ラストは一見変哲のない木型なのに履くと不思議と足が前に出るというか、足運びがやたらとスムースなのです。なんで???
もう一度正面図を見てみると、ソールが波打つように迫り上がっているのがわかります。

この写真は、シューツリーが入っており、トゥにはスチールがついているので削れはほぼない状態の写真です。特に親指側が大きく迫り上がっていることで、蹴り出しの際、最後にスッと抜けるように親指に重心が移動し、足運びが自然になります。
一方で多くの高価格帯の靴はソール中央に丸みをつけることによって、この重心移動をスムーズにしています。

ただ、これだと小指側(外側)に重心を逃すことも可能と言えば可能です。
それがこの8695ラストはそもそもソールに丸みはありません。真っ平です。

しかし、ソールにクセをつけた上で底付けすることで、親指で蹴り出す正しい歩きかたをサポートするというか、もうそれ以外の方法で歩けないというか……。履き心地を向上するのにそんな方法あるんだ!的な発見です。
改めてこの写真ですが、こんなに波打つような形で底付けしてある靴ってあまり見ません。

特段、トゥスプリングやねじれがすごいわけではないだけに、この歩き心地は衝撃でした。
ねじれやソールの丸みといったわかりやすいディテールがなくとも、良い履き心地は実現できるのだなぁ、と。
John Lobbの旧シューツリー!
ジョンロブの旧ツリーは8695ラストがベースになっているということで、今回の靴に入れた際のフィット具合は完璧です。でもやっぱり見た目は普通。

後ろから見ると、しっかりカカトのサイドが左右で形状が違います。また、この視点から見たときに前半分のピースの山の頂点と、ヒール側ピースの頂点が一致して重なるようになっているところにこだわりを感じます。

横から見てもまぁ、そうかな、みたいな。普通のツリーなんですけどね。これで履き心地すごいのが不思議です。

アゴ蹴ってる!
で、この靴ですがヒールのアゴ……トップリフトの尖っている部分のみ接地していて、踵は浮いている……いわゆるヒールのアゴが蹴っている状態です。

普通に置いてカタカタするような靴は高級靴じゃねえ!という話が以前雑誌かなんかで出て界隈を賑わせたこともあったようですが、個人的には気になりません。履き心地至上主義なので。
むしろこれはカントリーシューズなどの歩く目的の靴は敢えてこういうセッティングにするらしく、こんなのもこの靴の履き心地の良さに貢献していると思われます。足が自然と前に出る感じはコレが効いているのか?
このアゴは、このRusselに限ったものではなく、ジョンロブでも同じ時代のモノっぽい外羽根のフルブローグ(darbey)などには同様にアゴが蹴っている個体が見られます。
さすがにシティやフィリップなどのドレス寄りのモデルや、Darbeyでも最近出ているモデルなんかはキッチリ接地するセッティングになっています。
この靴自体はどうでも良いのですが、アゴ蹴ってるジョンロブがあったら是非履かず嫌いせずに履いてみてください!
8695ラストのサイズ感!
John Lobbのサイズは、エドワードグリーン等通常のUKサイズの靴からハーフサイズ落とす方が多いです。
が、8695ラストは捨て寸が少なく、縦方向に足が詰まる可能性があるので無闇にサイズを下げるのも危険。
また、靴が作られた時代によって8695ラストも改良されているので、できれば試着をお勧めします!
が、こんなところを読む方はそんなのは百も承知でそれでもサイズが知りてえんだ!!!という方だと思いますので、以後書いていくわけです。笑
結果的に、もでぃふぁいど は実測25.4cmくらいの足で7EのRusselを履けています。サイズ感としては若干タイト目のジャスト。1日履いていて痛くなることはない、くらいのフィット感です。
7でこれなら、6.5なら履けないですし、7.5なら羽根は確実に閉じるでしょう。8695ラストのサイズ選びは結構シビアかもしれません。
もでぃふぁいど が履いている(履いていた)その他の靴のサイズはこちらをどうぞ。
ただ、足が最近大きくなったこと(太った)、そもそもこのRusselが20年くらい前の靴であることなど、怪しい要素があるので現行の8695で単純に当てはめられるのかは正直不安なところです。
そもそも、現行の8695ラストの靴は2足とも試着時点で羽根がほぼ閉じてしまったのであり、個体差もそこそこありそうです。(完全に閉じたのが1足、これは……ギリダメか?というのが1足でした)
まぁ中古で買うのであれば、最悪そのまま売れば、新品買って失敗するよりダメージは遥かに小さいです。試着できなきゃ最後はエイヤでやるしかない、そしてその橋を渡ってしまうのが靴バカなのです。
というわけでJohn LobbはRusselのレビューをお送りしました。
いつでもどこでも履けて、捨て寸ないのにツラくない、むしろ歩き心地が良いという1足。これでダメならビスポークするしかないでしょ!!
今日のモディファイ!
こんなに良いならビスポークしたらもっと良いのかな……とか考えてはいけません。足るを知る、足るを知るのです。
ロブのラッセル、凄く良いコンディションで素敵です!羨ましい…!
私もパンチドキャップダービーは大好物で、フルブローグ、Uチップ(ともにダービー)と合わせてついつい新旧探してしまう形です(ノ∀`)
中でもラッセルは最高の選択肢と思い欲しいな欲しいな、なんて思う一方で情報不足…
故にこうして色んな角度の写真や観点での履き心地のレビューはありがたいです!
ロブは足入れの経験すら無いので、まずは現行の試着からですが…笑
ヒールの傾斜はダブルソール以上だと付いてるものが多く、曲がりにくいソールの歩き心地恒常やシャンクの保護になる説を耳にしますね。
チャーチやトリッカーズ、リーガルのカントリー系ダブルソールはみんなアゴ蹴ってる印象です。
一方ディンケやラズロはトリプルソールでも蹴ってないあたり、思想が垣間見えて面白いですね
akimintminさま
いつもありがとうございます!
パンチドキャップダービーがお好きであれば、Russelはたまらないと思います。現行の8695ラストとは若干フィッティングが異なる気がしますので、取り寄せて試着できるお店のものは積極的に狙ってみてもいいかもしれません!
アゴ蹴るのはそういう意味があるんですね。勉強になります!
東欧靴はハンドソーンの意地なんでしょうかね。笑